1995 Fiscal Year Annual Research Report
旧ソ連における農村地域での所有・経営形態の転換-ロシアを中心として
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07206206
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
岡田 尚三 高知大学, 人文学部, 教授 (30036587)
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Keywords | 農業改革 / ロシア / 所有・経営形態転換 / 土地改革 / 農民経営 |
Research Abstract |
土地改革の基礎である「ロシア土地法典草案」が1995年半ばに至って議会で採択された。その基調は、現実の土地・企業財産の私有化過程を反映してかさまざまな制限、猶予を置いた漸進的なものであり、土地私有権の承認等に関して現行憲法と矛盾する点を持っている。本草案を契機として連邦レベルでの所有・経営形態転換がいかに展開するかのフォローがますます重要になってきている。他方で、地域(地方)における所有・経営形態過程は、資料上の制約があるが現在のところ次のような類型化が可能である。第一に、転換先行地域であり、その一つのニジュゴロド州は、「資本主義の実験場」にふさわしく土地・企業財産の私有化について中央に比べて穏健で段階的な成熟過程・手続きを細かく規定した独自の方式を編み出し、国内の他の地域をもリ-ドする地位にある。しかし、先行が成功を約束するものでないことも示している。第二に、従来から農業の地位、役割が低かった地域(工業都市)における転換についてである。ウラル経済地域のスヴェルドロフスク・エカチェリンブルグは、もともと閉鎖都市として重・運需産業地帯に特化した産業構造を持っていた。したがって、農業自体の占める役割は大きくなかった歴史的要因から、農業における私有化過程にそう特筆すべきものはないと言ってよいが、問題は、農業改革によってそのすべての指標悪化が促進され、離農・農業生産の衰退に拍車がかかっていることである。第三に、中央の政策と一定の距離を置いて、独自の改革路線を実行している地域がある。その代表と目されるタタール共和国では、連邦や他地域とは大きく異なる性格を帯びた市場経済化への移行が展開されている。端的に言えば、コルホ-ズ、ソフホ-ズ改造型の漸新的私有化とそれに基づく安定的農民の創出が進行しており、ロシアにおけるシステム転換の一つのオールタナティヴを提起している。
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