1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07303001
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Research Institution | KANTO GAKUIN UNIVERSITY |
Principal Investigator |
永井 義雄 関東学院大学, 経済学部, 教授 (40019815)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関口 正司 九州大学, 法学部, 助教授 (60163101)
下川 潔 中部大学, 女子短期大学, 助教授 (40192116)
山内 友三郎 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (80030344)
有江 大介 横浜国立大学, 経済学部, 教授 (40175980)
音無 通宏 中央大学, 経済学部, 教授 (20041105)
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Keywords | 公益 / 最大幸福 / 福祉政策 / 生命倫理 / ベンサム / シンガー / ミル / ヒューム |
Research Abstract |
平成9年度は、2回の研究会を開催できた。このほか、裏面に示すような、論文を作成の過程で相互に討議し、論文作成後も議論を個人的に重ねている。 この討議のなかで、次第に明らかになったことは、(1)若い研究者を中心に次第に公益(功利)主義に対する関心が増大しつつあること、(2)とりわけ難しい対応を迫られている生命倫理の分野を中心に、実践倫理の基本原理として、公益(功利)主義が重要な役割を求められていること、(3)その生命倫理の分野において、公益(功利)主義は、必ずしも一致した見解を共有しているわけではないが、一定の範囲においては、つまり、生命と死の尊厳という基本を踏まえた上で、全体の幸福の増大という公益(功利)主義の観点からする、最新医療の価値判断に大きい役割を果たしていること、(4)そのなかで、従来問題とされてきた公益(功利)主義の理論上の難点は、ヘア教授の二層理論で解決されたこと、(5)こうした、いわば現場における実践的、理論的問題に当面するなかで、公益(功利)主義の古典の研究も、進展した。その最大の刺激は、ロンドン大学における新判『ベンサム全集』の編集の進歩であるが、そのほか、国際公益(功利)主義学会の世界大会による研究交流の着実な増大がある。われわれもまた、こうした流れのなかに積極的に身を置き、いわば、日本公益(功利)主義学会の役割を果たすように、研究会を進めてきた。このため、ベンサム研究においては、その経済論と宗教論との研究が特に進んだが、このほかベンサムを中心に公益(功利)主義の発生(カンバーランド)から展開(特にロックとヒューム)の研究は、相当に高い水準にあると評価されるにいたった。 しかしながら、研究の進展は新しい課題を生む。いまや、イングランド思想としての公益(功利)主義は、スコットランド啓蒙思想(特にスミス経済学)との対比において捉えられなければならないことが、はっきりし、必要となった。
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Research Products
(16 results)
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[Publications] 音無 通宏: "British enrpirical theories and neligion-Locke, Hume and Bentham" 経済系(関東学院大学経済学部). 193号. 1-18 (1998)
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[Publications] 音無 通宏: "イギリス経験論の展開と神の存在証明-ロック、ヒューム、ベンサムの宗教論" 専修大学経済論集. 69. 1-35 (1998)
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[Publications] 立川 潔: "J.S.ミルのリベラリズム批判-社会再生における権威の必要性の認識" 成城大学経済研究所報告. 16. 1-13 (1998)
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[Publications] 下川 潔: "ジョン・ロック『知性の正しい導き方について』(その三)" 中部大学女子短大紀要 言語文化研究. 8. 144-166 (1997)
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[Publications] 下川 潔: "ジョン・ロック自由主義における『行為の自由』と『信教の自由』" 科学研究集補助金基盤研究(C)(2)報告. 1-117 (1997)
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[Publications] 下川 潔: "政教分離の七つの根拠-ロック『寛容論最高』より-" 日本倫理学会『倫理学年報』. 47. 81-95 (1998)
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[Publications] 下川 潔: "ジョン・ロック『知性の正しい導き方について』" 中部大学女子短大紀要 言語文化紀要. 9. (1998)
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[Publications] 下川 潔: "モントレー大会のヒューム研究者たち" 日本イギリス哲学会『イギリス哲学研究』. 21. (1998)
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[Publications] 有江 大介: "ベンサムの宗教批判と快楽主義的人間像-ベンサム社会科学の方法" 経済系. 193. 19-33 (1998)
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[Publications] 土方・直史: "Owenismと功利主義-協同社会における管理方式と株式会社" (中央大学)経済学論集. 34-3,4. 309-334 (1998)
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[Publications] 土方 直史: "書評 永井義雄『イギリス近代社会思想史研究』" ロバアト・オウエン協会年報. 23. 153-159 (1998)
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[Publications] 近藤加代子: "クロムウェルのプロテスタンティズムとナショナリズム" 岩間一雄編『近代とは何であったか』(大学教育出版). 57-82 (1997)
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[Publications] 深貝 保則: "チャーマ-ズにおける人口3区分論と生産構造把握" 商経論叢(神奈川大). 32-4. 33-72 (1997)
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[Publications] 深貝 保則: "書評 中村広治『リカード経済学研究』九大出版会" 熊本学園大学論集. 3-4. 81-90 (1997)
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[Publications] 深貝 保則: "書評 永井義雄『イギリス近代社会思想史研究』未来社" 経済学史学会年報. 35. 171-173 (1997)
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[Publications] 深貝 保則: "Utilitarian Project of the Economic Role of Government" 経済系. 193. 34-45 (1998)