1995 Fiscal Year Annual Research Report
人工骨髄の開発と実用化-ハイブリッド型免疫器官・人工骨髄造血巣誘導系の実用開発-
Project/Area Number |
07309003
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Co-operative Research (A)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西原 克成 東京大学, 医学部(病), 講師 (10010323)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹下 剛 東京大学, 医学部, 講師 (10107667)
松田 良一 東京大学, 教養学部, 助教授 (90165837)
田中 順三 科学技術庁, 無機材質研究所, 総合研究官
広田 和士 科学技術庁, 無機材質研究所, 研究員
|
Keywords | 異所性造血現象 / 人工骨髄チャンバー / 未分化間葉細胞 / 流動電位 / 遺伝子発現 / BMP / 生体力学 / 用不用説 |
Research Abstract |
哺乳動物の筋肉内に移植した合成ヒドロキシアパタイトの人工骨チャンバーで認められた異所性の造骨を伴った造血現象は、試験研究で得られた画期的な成果であるが、この現象は、皮下に移植した時には起こらない。本年はこの現象が、筋肉内と皮下でいかなる違いがあるかを検討した。筋肉内も皮下組織内も共に間葉系由来の細胞からなり、筋肉は体動の源の器官として収縮と伸展を繰り返す器官であるが、皮下組織は積極的に収縮伸展をしない。このことから、両組織間における造骨・造血現象の有無の違いは、液性の流動の有無によると考えられる。今日、骨の形成は流動電位(streaming potential)によると考えられている。本研究では、骨の形成のみならず、骨の改造も造血もすべてstreaming potentialの作用によるとする作業仮説を検証することを目的の一つとしている。組織や器官における細胞の分化やサイトカイン、骨基質などの物質の形成はすべて未分化間葉細胞の遺伝子の発現によることは論ずるまでもない。本年度は、streaming potentialによる一連の遺伝子の発現を明らかにする目的で研究を行った。チタンメッシュとアパタイト多孔体の二種類の人工骨に10μVの電流を流して皮下組織に移植し、筋肉内移植の所見と比較した。その結果、アパタイトでは皮下で筋肉内の所見と同様の造血と造骨が観察され、チタンメッシュでは著明な白血球造血が観察された。造血・造骨の現象と、間葉細胞と電流の関係とを明らかにする目的で、皮下にBMP(bone morphogenic protein)と共にアパタイトチャンバーを移植したがこの所見も、これらの組織所見と同様であった。 これらのことから、間葉系組織内における造骨・造血の一連の現象がstreaming potentialによる未分化間葉細胞の遺伝子の発現によるBMPの誘導によることが明らかになった。そこで、合成アパタイトの生理食塩水流動下でstreaming potentialを観測し、水圧を変化させて発生する電位を測定した。一方、進化の過程では、骨髄造血が、陸樓による重力の影響下で生じた血圧の上昇で起こっていると考えられることから、骨髄腔をもたない軟骨魚類(サメ)と円口類(メクラウサギ)に人工骨髄チャンバーを移植した結果、哺乳類と同様に類骨と造血巣の誘導が認められた。これは、進化がラマルクの用不用説に従うことことを実験的に検証した画期的成果といえる。すなわち、造血と造骨は、遺伝現象とは別の重力や局所に作用する生体力学を引き金として起こる間葉細胞の遺伝子の発現で起こることを明らかにしたものである。 次年度はこれをin vitroで行うと同時により有効な造血チャンバーの開発にあたる。
|
Research Products
(8 results)
-
[Publications] 西原克成: "人類の進化と人工臓器" 日本機械学会第72期通常総会講演会論文集. (V)(No.95-1). 495-496 (1995)
-
[Publications] 西原克成: "実験進化学手法によるセメント質誘導型と骨性癒着型人工歯根の生物学的違いについて" 日本口腔インプラント学会総会抄録集. 29 (1995)
-
[Publications] 西原克成、高久田和夫、広田和士: "骨の生体力学特性の解明と人工骨格による細胞分化の誘導" 第17回日本バイオマテリアル学会大会. 87 (1995)
-
[Publications] 西原克成: "実験進化学によるセメント芽細胞および骨髄造血細胞の誘導" 第40回日本口腔外科学会総会抄録集. 135 (1995)
-
[Publications] H. Seno A. Yanai K. Nishihara: "Investigation on Inducement of Tissues Around the Porous HAP Ceramics in Different Environmental Factors: Bone, Cartilage, and Muscle" Abstracts of Second International Syposium on Apatite. 20 (1995)
-
[Publications] K. Nishihara T. Tange K. Hirota K. Fujii Junzo Tanaka Y. Hiravama: "Successful Development of Hybrid Type Artificial Bone Marrow Chamber and New Concept for Immunology" Abstracts of Second International Syposium on Apatite. 21 (1995)
-
[Publications] K. Nishihara: "The Basic Construction of Vertebrate, Structural Defects in the Human Body and a New Concept of the Immune System" J Oromax Biomech 1 (1). 79-87 (1995)
-
[Publications] 西原克成: "顔の科学" 日本教文社, 185 (1996)