1996 Fiscal Year Annual Research Report
人工骨髄の開発と実用化-ハイブリッド型免疫器官・人工骨髄造血巣誘導系の実用開発
Project/Area Number |
07309003
|
Research Institution | UNIVERSITY of TOKYO |
Principal Investigator |
西原 克成 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (10010323)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末次 寧 科学技術庁, 無機材研, 研究官
丹下 剛 東京大学, 医学部, 講師 (10107667)
松田 良一 東京大学, 教育学部, 助教授 (90165837)
田中 順三 科学技術庁, 無機材研, 総合研究官
広田 和士 科学技術庁, 無機材研, 特別研究員
|
Keywords | 人工骨髄バイオチャンバー / 骨髄増血巣 / ヒドロキシアパタイト / streaming potential / 免疫疾患 / 免疫現象 / 系統発生学 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
本研究は、脊椎動物の謎と言われた骨髄腔における造血の仕組みを解明し、これを臨床応用することを目的とする。これは進化の第二革命期の上陸に際して、造血の場が原始脊椎動物本来の腸管を離れ、骨髄腔に移動したとする三木成夫の「脾臓の発生」研究に基づいている。人工骨髄造血器の開発は、今日、臨床上緊急の課題である。研究代表者の西原は、合成ヒドロキシアパタイトを用いて実験的に骨髄造血巣を哺乳類の筋肉内に異所性に、間葉系細胞から誘導することに既に成功し、1994年の第32回日本人工臓器学会においてオリジナル賞一位を受賞した。本研究はこの研究成果を実用化する目的のもので、次の5種類の研究を実施した。(1)間葉細胞の遺伝子の発現がstreaming potentiolによることを実験であきらかにした。(2)有効に造血巣を誘導する電極型の人工骨髄バイオチャンバーの設計と作製を行い、これらを成犬と成猫へ移植し、造血誘導能の観察を行った。(3)系統発生における腸管造血から骨髄造血への変換、すなわち骨髄造血の発生の原因が何であるかを解明する目的で、実験進化学手法を考案した。進化のエポックとなる哺乳類(猿・犬)、鳥類(ヒヨコ)、両生類(ゼノプス)、軟骨魚類(ドチザメ)、と円口類(ヌタウナギ)の筋肉内に合成アパタイト人工骨髄バイオチャンバーを移植し、造血巣の誘導の有無を観察した。(4)牛由来のコラーゲンとアパタイトとの低温による複合燒結体を開発し、同様の移植実験を成犬とドチザメで行い、組織免疫と造血の関係を観察した。(5)人類特有の免疫疾患の原因を究明し、本疾患が人類のみに特有の構造欠陥で生ずる口呼吸が主要原因との結果を得たので、成犬と成猫の脛部ワルダイエル扁桃リンパ輪部に培養した口腔内常在菌を多量に注入し、免疫病の実験動物による作製を試みた。これらの実験結果から異所性ならびに骨髄腔を持たない軟骨魚類における異種性の造骨と造血現象がすべてのアパタイトとチタン電極バイオチャンバーの移植により、すべての種において観察された。また、牛由来のコラーゲンは犬では明らかな細胞レベルの消化現象が観察されが、サメでは円滑な類骨と造血巣の誘導が観察された。これらの実験結果から、骨髄造血の成立が、浮力に相殺された見かけ上の6分の1Gの水中から陸棲への変化に伴う1Gの作用によることが明らかとなった。また、原始脊椎動物の組織は哺乳類の胎児蛋白に相当し、主要組織適合抗原を持たないことが明らかとなり、胎児蛋白の成体型への変換が骨髄造血に伴う重力の作用と考えられる結果が得られた。これらのことから組織免疫と感染免疫とアレルギーで混迷している現在の免疫学を統一的に理解できる新しい免疫学の考え方として「細胞レベルの消化・代謝・呼吸」(三木)という新しい免疫学の概念を樹立することができた。
|
Research Products
(20 results)
-
[Publications] 西原克成: "実験進化学と新しい免疫学の概念." 口科誌. 45(5). 617-618 (1996)
-
[Publications] 西原克成: "骨の形態的機能適応現象のメカニズムの解明." 平成4-6年度科研費(重点領域研究)研究成果報告書. 204-205 (1996)
-
[Publications] 西原克成、丹下 剛、松田良一、瀬野久和、梁井 皎、藤井和子、田中順三、広田和士: "実験進化学手法によるハイブリッド型人工器官の開発と新しい免疫学の概念." 人工臓器. 25(3). 753-758 (1996)
-
[Publications] 西原克成、田中順三: "実験進化学手法による天然型人工歯根の開発." 第26回日本口腔インプラント学会総会抄録集. 47. (1996)
-
[Publications] 西原克成、田中順三: "骨性癒着と線維結合状態の天然型人工歯根の生体力学的比較研究." 第26回日本口腔インプラント学会総会抄録集. 47. (1996)
-
[Publications] 西原克成: "顔面頭蓋の器官特性について." フォーラム顔学 第1回日本顔学会大会論文集:39,パネル検討:顔学への招待. (1996)
-
[Publications] 西原克成: "口呼吸習癖と人類特有の疾患との関連-現代医学の盲点-." 治療. 78(8). 150-151 (1996)
-
[Publications] 西原克成、田中順三: "骨格系組織の力学対応システムとリモデリングの遺伝子工学." 日本機械学会第74期全国大会講演論文集(1). 155-156 (1996)
-
[Publications] 西原克成、佐藤陽子、森沢正明: "生物の骨格系物質とW.Rouxのバイオメカニクス-マホヤによる力学対応進化学の検証-" 材料力学部門講演会講演論文集. Vol.A. 133-134 (1996)
-
[Publications] 西原克成、田中順三、広田和士: "実験進化学手法による力学対応進化学の検証." 日口診誌. 9(2). 232-249 (1996)
-
[Publications] 西原克成、丹下 剛、松田良一、田中順三、広田和士、樺沢 洋: "人工骨髄造血巣の誘導実験と新しい免疫系の概念" 日口診誌. 9(2). 217-231 (1996)
-
[Publications] 西原克成: "口と前進の発生学的関連性." 顔面バイオメカ(シンポジウム). 2(1). 54-57 (1996)
-
[Publications] 西原克成、松田良一、森沢正昭: "新しい進化学理論の実験による探索-脊椎動物の力学対応進化学の実験系の確立-" 科研費重点領域研究研究成果報告書「人工生命システム」. 114-119 (1997)
-
[Publications] 西原克成: "人工材料(無機)-この1年の進歩." 人工臓器. 25(649). 940-942 (1996)
-
[Publications] K.Nishihara,Y.Sato,M.Morisawa: "Morphology of the Viscerocranium and Evolution of Verebrates." J Oromax Biomech. 2(1). 16-18 (1996)
-
[Publications] K.Nishihara,H.Kabasawa: "Relations between Gravity and Cell Differentiation in vertebrates-A New Concept of Immunology-." J Oromax Biomech. 2(1). 19-22 (1996)
-
[Publications] K.Nishihara,J.Tanaka: "Successful inducement of hybrid type artificial bome marrow using bioceramics in various vertebrates." Bioceramics. 9. 69-72 (1996)
-
[Publications] K.Nishihara: "Development of Hybrid-type artificial immune organ by means of experimental evolutionary research method using bioceramics." The 1st International Symposium of Tissue Engineering for Therapeutics Use,March 27-28,1997,Kyoto Japan,1997.招待講演.
-
[Publications] 西原克成: "日本教文社、東京" 顔の科学, 209 (1996)
-
[Publications] 西原克成: "法研、東京" 呼吸健康術, 170 (1996)