1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07454138
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
比屋根 肇 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (70192292)
|
Keywords | 窒素 / 大気形成 / マントル / 溶解度 / 固液分配係数 / 酸素分圧依存性 |
Research Abstract |
本研究では、窒素から眺めた地球大気・マントルの進化史を理解するために、窒素のふるまいに関する基礎データとして、窒素の気相/液相分配(珪酸塩メルトへの溶解度)、固相/液相分配(珪酸塩メルトと輝石間の分配)の2点について実験をおこなった。窒素の溶解度に関しては、温度(1300℃-1600℃)圧力(窒素分圧が0.5-1000気圧)の他に酸素分圧(IWバッファー2桁下-10桁上)を大きく変えて実験をおこなった。窒素分圧依存性はリニアーでヘンリーの法則が成り立っている。温度依存性は小さい。実験条件の範囲内で酸素分圧依存性はみられず、窒素の溶解度はほぼアルゴンの溶解度に等しい。これらの実験結果はすべて、窒素が分子状態で珪酸塩メルトに溶解していることを示唆している。また、酸化的な雰囲気下で気相中に質量数30の窒素分子を過剰に加えておこなった実験では、メルトへの溶解時に窒素の同位体交換がおこらないことが示された。これは窒素が分子状態で溶解していることの直接的な証拠である。固相/液相分配の実験はピストンシリンダー型の装置を用いて、1万5千気圧、1350℃-1270℃の条件で珪酸塩メルト-輝石結晶のペアを合成しておこなった。鉱物分離の後、それぞれのフェイズの中の希ガスと窒素の濃度を分析して分配係数を求めた。得られた固相/液相分配係数は、窒素で0.06、アルゴンで0.11で大差はなかった。以上ふたつの実験結果を総合して考えると、火成活動によつて窒素と希ガスの分別はあまり生じないと結論づけられる。したがって、現在の地球大気とマントルの窒素/アルゴン36の比(1万と100万)が2桁も異なっていることは、火成活動による窒素と希ガスの脱ガス過程の差ではなく、他の過程(たとえばコア形成の際の金属鉄の寄与)を考える必要がある。
|