1996 Fiscal Year Annual Research Report
プラズマ溶射コーティング膜に存在する欠陥と耐環境性の相関性
Project/Area Number |
07455057
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Research Institution | KOUGAKUIN UNIVERSITY |
Principal Investigator |
木村 雄二 工学院大学, 工学部, 教授 (90107160)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 幸男 工学院大学, 工学部, 講師 (80100361)
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Keywords | プラズマ溶射コーティング / 耐食性 / 耐酸化性 / 腐食挙動 / 電気化学測定 / CPCD法 / 欠陥存在率 / 耐環境性 |
Research Abstract |
プラズマ溶射コーティングは,大規模な真空チャンバーを必要とせず,成膜速度が大きく,膜厚制御が容易であり,また成膜する材料の選定が幅広く行えるなどの優れた特徴から,耐熱性ならびに耐摩耗性を付与するコーティングとして種々の分野で実用に供されてきた.しかしながら,本来,耐食性,耐熱性などに優れるセラミックコーティング膜自身は,これらの抵抗性が著しく大きいはずであるにもかかわらず,溶射皮膜生成のメカニズム上不可避的に膜中に存在する欠陥のために成膜された部材が必ずしも優れた特性を示さないなど,数多くの問題が解決されないままに残されている現状にある. そこで,耐食性・耐酸化性などの種々の抵抗性と皮膜中に存在する欠陥の形態との相関性を明らかにし,減圧溶射することによる皮膜構造の緻密化がこれらの特性に及ぼす影響,ならびにCPCD法による溶射コーティング皮膜の欠陥評価の可能性を検討し,以下の結論を得た。 1.SUS304ステンレス鋼基材上に大気中でプラズマ溶射法により成膜されたイットリア安定化ジルコニアの通常の2層皮膜ならびに傾斜組成皮膜について,SEMならびにEPMAによりコーティング膜の微細構造ならびに膜中に存在する気孔および割れなどの欠陥の存在状態を検討した結果,2層溶射材に比べて傾斜組成成膜の場合にこれらの形成が著しく抑制されることが明らかとなった. 2.種々の電気化学的手法を用い,前述のコーティング皮膜ならびに2層の封孔処理皮膜対して,1N-H_2SO_4ならびに3%NaCl水溶液中で分極測定,カップリング条件下での腐食特性評価を行った結果,傾斜組成皮膜はカップリング条件下などの比較的マイルドな腐食環境下を除けば,プラズマ溶射コーティング皮膜の耐食性の改善に対し期待したほど寄与していないことが示された. 3.H_2SO_4ならびにKSCNを含む水溶液中での臨界不働態化電流密度(CPCD)の測定結果から,CPCD法により通常の2層皮膜ならびに封孔処理皮膜の貫通欠陥率を求めた結果,エチルシリケートにより封孔処理を施した皮膜の欠陥面積率が非処理材に比べて1/4程度に改善されることが明らかとなった. 4.多目的高温炉を用いた大気環境下高温ヒートサイクル試験の結果,大気溶射皮膜の方が減圧プラズマ溶射皮膜に比べてヒートサイクル環境下における酸化劣化抵抗性が優れていることを示した. 5.高温ヒートサイクル環境下におけるプラズマ溶射コーティングの劣化挙動に対しても,封孔処理が極めて有効であることを明らかにした.
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