1996 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病における高次脳機能傷害の解析と中枢神経ヒスタミンの役割
Project/Area Number |
07457225
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Research Institution | OITA MEDICAL UNIVERSITY |
Principal Investigator |
坂田 利家 大分医科大学, 医学部, 教授 (50037420)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉松 博信 大分医科大学, 医学部, 助手 (00166993)
桶田 俊光 大分医科大学, 医学部, 講師 (60136439)
渡辺 建彦 東北大学, 医学部, 教授 (70028356)
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Keywords | 糖尿病 / 神経ヒスタミン / 脳機能障害 / グルコーストランスポーター / 視床下部 / グルコース作用 / インスリン / 学習 |
Research Abstract |
糖尿病における脳機能障害をヒスタミン神経機能から解明する目的で、前年度は神経ヒスタミンによる脳神経細胞のグルコース利用の作用機序を解明し、次いで糖尿病モデル動物にみられる神経ヒスタミン機能低下と学習行動障害について明らかにした。今年度は、これらの結果に加え、以下の事実をつきとめることができた。1)脳-末梢組織間での糖利用に対する神経ヒスタミンの役割を解明するために、ヒスタミンH3受容体阻害薬のチオペラミドを中枢内に投与し、脂肪組織のglucose transporter4 (GLUT4)のmRNA発現量の変化を解析した。その結果、神経ヒスタミンの賦活化によりGLUT4mRNAレベルが減少した。この所見は、前年度明らかにした脳のGLUT1 mRNA増加反応とは逆の現象であった。つまり、神経ヒスタミンは脳の糖利用を促進するために、一方では末梢の糖利用を抑制する作用を有することが明らかになった。2)脳へのエネルギー供給に対する神経ヒスタミンの関与を、in vivo microdialysis法により、脂肪組織レベルで解析した。チオペラミドを中枢内に投与してヒスタミン神経系を賦活化すると、脂肪組織からのグリセロールの放出が増し、脂肪分解は亢進していることが明らかになった。脂肪合成系の指標であるacyl CoA synthetase (ACS) mRNAの発現量を測定すると、チオペラミド投与では逆に減少した。生理的な意義について考察すると、神経ヒスタミンは脂肪組織での脂肪代謝を中枢性に制御し、一方で脂肪分解作用によって生じた遊離脂肪酸を、エネルギー基質として脳に供給する作用のあることが示唆された。3)遺伝性モデル動物であるZucker obese rat (fa/fa)では、視床下部ヒスタミン含量やヒスタミン合成酵素(HDC)活性はともに低いことを前年度に報告した。今年度は、遺伝性糖尿病モデル動物であるdiabetic mouse (db/db)の視床下部ヒスタミンを解析した。その結果、fa/fa rat同様、db/db mouseでも視床下部のヒスタミン含量は低下していることが明らかになった。両者に共通する遺伝子レベルの異常は、肥満遺伝子(ob gene)の分泌蛋白であるレプチンのレセプター欠損によっている。ヒスタミン神経系を賦活化すると、脂肪組織でのob gene mRNAの発現量が抑えられることも明らかになり、レプチンとヒスタミン系が機能的に連動して作動していることが示唆された。そこで、4)Wistar king Aラットを用い、レプチンの中枢性投与による神経ヒスタミンの活性変化をHPLC法により解析した。その結果、レプチン投与により神経ヒスタミンの代謝回転が亢進することが判明した。モデル動物におけるヒスタミンの低下は、レプチンによるヒスタミン神経系への促進作用がレプチンレセプター異常のために、作用が欠落することにその原因があると考えられる。5)passive avoidanceを用いた学習機能実験では、ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットだけでなく、Zucker obese ratでも学習機能の異常が認められた。両者はともに神経ヒスタミン機能が低下していることから、学習機能における神経ヒスタミンの重要性が示唆された。健常ラットを用い、海馬や扁桃体の局所の神経ヒスタミンの関与を解析した結果、扁桃体のヒスタミン受容体が学習行動へ関与していることが明らかになった。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] K.Fukagawa et al: "Transplantartion of lean fetal hypothalamus restores hypothalomic function in Zucker obese rats" Am.J.Physiol.271. R55-R63 (1996)
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[Publications] H.Morita et al: "Ornithine decarboxylase activity in rat intestinal mucosa and liver is stimulated by central administration of 2-deoxy-D-glucose but not of 2,5-Anhydro-D-mannitol" Brain Res. 719. 112-116 (1996)
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[Publications] P.Tso et al: "Apolipoprote in A-IV : A circulating satiety signal produced by the small intestine" Obesity Res.3. 689-695 (1995)
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[Publications] K.Fujimoto et al: "Histaminergic control of mucosal repair in the small intestine" Obesity Res.3. 795-799 (1995)
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[Publications] M.Kang et al: "Hypothalamic neuronal histamine modulated physiological responses induced by interleukin-1β" Am.J.Physiol. 269. R1308-R1313 (1995)
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[Publications] T.Doi et al: "Alpha-amylase inhibitor increases plasma 3-hydroxybutyric acid food-restricted rats" Experientia. 51. 585-588 (1995)