Research Abstract |
家族による在宅ケアが地域文化の伝統として,また,地理的及び医療サービス施設分布条件により引き継がれていることが一年目の調査で明確化されたので,当研究は在宅ケアの援助の方法とし町興し運動が効果的な援助計画に結びつくと思われ,そのために住民の意識改革について焦点をあてた。手始めとして,当研究は成人層ではなく若年層である当島中学生,165名を対象に調査を開始した。1995年に当県によって当島中学生を対象に2年間にわたる福祉体験活動推進研究が行われていたので,授業時間を割いて同じような福祉体験活動プログラムをもう一度繰り返すことなくそのフォローアップを試みた。この体験活動は全島住民も参加しており,当研究がAction Researchとして試みようとした活動の多くがすでに実践されていたからである。当該研究期間1996年5月より1997年3月に至った。アンケート調査を7月と11月に,町興しに関する作文,塾での集団インタビュー,診療所及び当町の老人施設のあるI島の施設長のインタビューを行った。対象中学生は165名,1年生61名(男子37名,女子24名),2年生55名(男子31名,女子24名),3年生49名(男子18名,女子31名)であり,13歳,14歳が全体の63%,全男子数86名,全女子数79名であった。一回目の当島の暮らしと健康に関する意識調査の結果は,今の生活に満足している(71%),家族や近隣の人と話し合うのがあまり好きではない(62%),また,誰が病人の世話をするべきかは家族の者であるという答えが最高で,施設利用希望は21&,また,一番関心のあることは勉強と遊びであり,勉強の時間を割いて家事の手伝いをするというのは27%,当島で一生暮らしたいと思わない者は73.5%であった。2回目の調査は県の福祉体験のフォローアップを行い,回収率99%(163)であった。結果は,特に考えや行動に変化はなし(38%),福祉体験に興味なし(21%),であり,一方,以前気がつかなかった障害者,老人,町興しなどに気がつくようになった者(52%),人の役に立つようななにかがしたいと思ったり,親切にしたいと思った者(53%)であった。以上の結果から,当島中学生の町の改善,町づくりの希望は成人と類似しているところが多いことがわかった。しかし第一回目の意識調査で3/4の回答者が島外に暮らしたいという希望は成人のそれとは相異し,町づくりの考え方の関係は複雑なものである。
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