Research Abstract |
運動が高血圧,糖尿病,肥満などの退行性慢性疾患の予防や治療に有効であることは認められてるが,最近ではガンや易感染症等と関係が深い免疫能と運動との関わりについても大きな関心が寄せられている. 本研究では中高年者を対象にしたマイルドな有酸素性トレーニングが,免疫能へどの様な影響を及ぼすかについて比較・検討した. 対象を運動習慣のない健常な女性中高年者6名(平均年齢65歳)とした.トレーニングは自転車エルゴメーターを使用してLT強度で60分/回,3回/週,計5週間施行した.トレーニング前後に総白血球数,補体価(血清補体50%溶血価:CH50),好中球貧食能(フローサイトメトリー法),顆粒球活性酸素産生能(オプソニンザイモザン及びルミノールを加えた化学発光),NK細胞数(フローサイトメトリー法),血清サイトカイン濃度(IL-1β,IL-2,IL-6,TNFα:ELISA法)を測定した. その結果トレーニング前後で,LT強度に相当する仕事率は平均で9watts有意に増加した.総白血球数,顆粒球数,リンパ球数,単球数のそれぞれの変化量に差が認められなかった.また,CH50,好中球貧食能,顆粒球活性酸素産生能,NK細胞数,IL-1β,IL-2,IL-6,TNFαの全てにも変化が認められなかった.トレーニング前後の各パラメーターの変化には個人差が見られ,NK細胞数は6名中5名が増加し,平均で34.6%の増加であった.好中球貧食能も6名中5名が増加しており平均で16.7%の増加していた.また,トレーニング前に測定したLT強度から見た体力レベルや年齢とこれら免疫パラメータとの間には相関関係は見られなかった. 以上の結果からは,LT強度による5週間のトレーニングは身体機能を高めるとともに,NK細胞数,好中球貧食能を増加させる可能性が示唆された.
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