1996 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子組換え技術による性腺刺激ホルモン(FSHとLH)の産生と応用
Project/Area Number |
07556124
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Research Institution | KITASATO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
森 純一 北里大学, 獣医畜産学部, 教授 (90167685)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊原 武志 財団法人 日本生物科学研究所, 研究員 (70150109)
稲葉 俊夫 大阪府立大学, 農学部, 助教授 (00137241)
加藤 幸雄 群馬大学, 生体調節研究所, 助教授 (30114177)
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Keywords | 性腺刺激ホルモン / 組換えDNA / ブタ / バキュロウィルスベクター / 胚移植 / 卵胞刺激ホルモン / 黄体形成ホルモン |
Research Abstract |
家畜の卵胞刺激ホルモン(FSH)はブタ下垂体からの抽出精製標品が市販され、畜産領域で実用に供されている。しかし、ウシ胚移植におけるドナーの過剰排卵成績では、標品に夾雑する黄体形成ホルモン(LH)量のロット間の差が大きく、安定した排卵結果が得られないことが障害となっている。一方、従来より、FSHそれ自身に排卵誘起作用が推測されており、この作用が強すぎると、卵胞の成熟を損ない、卵胞の早期閉鎖を導くことが示唆されている。本研究では、遺伝子工学技術で作成した組換え体ブタFSH(rpFSH)を用いて、FSHの排卵誘起作用について検討を行った。さらに、rpFSHの大量発現系を検索する目的で、酵母による発現およびカイコによる体内発現系などを検討するとともに、LHについてバキュロウィルスとSf21による発現の検討を行った。 1)妊馬血清性性腺刺激ホルモン(PMSG)前処置・下垂体摘出ラットを用いたin vivo実験: 下垂体摘出ラットを用いてPMSGを前処置したのち、rpFSHを投与し、排卵の有無を観察するとともに、卵巣中の排卵の指標となる組織型プラスミノーゲンアクチベータ-の酵素活性を測定した。その結果、rpFSH投与群では、排卵が誘起され、卵巣中tPAの酵素活性は有意に上昇し、tPAmRNAの発現も有意に増加した。 2)ラット培養卵胞上皮細胞を用いたin vitro実験: ラット培養卵胞上皮細胞を用いて、rpFSH添加後のtPA酵素活性を測定した。その結果、卵胞上皮細胞からのtPAの分泌はrpFSHの添加により有意に上昇した。以上の結果により、rpFSHは卵胞上皮細胞でtPAのmRNAを発現させることにより、排卵に作用していることが示唆された。 3)rpFSHの大量発現およびLHの発現についての実験: rpFSHの大量発現のための、酵母による発現系では、α鎖において非常に低く、β鎖においても期待程高くはなかった。また、カイコによる体内発現系では、体液および虫体磨砕液中に10〜50倍のrpFSHの産生を認めた。さらに、LHについての検討では、イムノブロッティングによってLHβ鎖に特異的なバンドを検出できなかった。
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[Publications] Inaba T,Mori J,Ohmura M,Kato Y,et al: "Baculovirus-insect cell production of bioactive porcine FSH." Theriogenology. 47. 491-499 (1997)
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[Publications] 加藤幸雄,鄭 恵玉: "組換え体性腺刺激ホルモンの産生と応用" JVM(獣医畜産新報). 49(I). 39-43 (1996)