1997 Fiscal Year Annual Research Report
ピコメータ精度計測システムを使った蛋白分子間相互作用の解析法
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07558096
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上村 慎治 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (90177585)
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Keywords | ナノメーター計測 / 微小管滑り運動 / ピコメーター計測 / 細胞運動 / caged化合物 |
Research Abstract |
平成9年度の研究計画に従い、開発した装置の応用実験を行った。水平式の光学系を持った実験装置の設計・開発を行って来たために、外部からの紫外線導入など、光学系の変更が非常に容易であった。波長350mmの紫外線(超高圧水銀灯)を使って観察試料を落射照明できるように改良した。この装置を用い、以下のcaged-ATPを使った新しい実験を試みた。トリトン処理したウニ精子鞭毛を実験材料として、瞬間的(数ミリ秒以内)にATPを付与し、その時の微小管滑り運動をnm〜数百pmの精度で計測することができた。その結果、鞭毛軸糸の中のダイニンがATPと結合し、ダイニン・ADPの反応中間体となったものが、滑り力発生(運動の開始)に関与している可能性が最も高いことが証明できた。これはこれまでテトラヒメナを使って行われてきたダイニンATP加水分解酵素に関する生化学的な報告を裏付ける結果であり、ダイニンのin situでの酵素化学反応論的な実測としては、はじめての報告である。反面、ダイニン・ADPと急速に結合するために強い阻害効果を持つと考えられて来たバナジン酸は、この運動開始に関わっていると考えられるダイニン・ADP反応中間体には全く作用しないということもこの研究で判明した。力発生のメカニズムを理解する上で非常に重要な知見である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Tani,T. and Kamimura,S.: "Reactivation of sea-urchin sperin flagella induced by rapid photolysis of caged ATP." J.experimental Biology. (in press). (1998)
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[Publications] 上村慎治: "細胞のミクロ探検-見えないものをみる-" 日本学術協力財団, 16.(57-72) (1997)
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[Publications] 上村慎治: "高分解能顕微鏡で捉えた分子モーターの揺らぎ" 日本生物物理学会(生体分子モーターのしくみ), 14(144-151) (1997)