1995 Fiscal Year Annual Research Report
近代表象主義に対するデイヴィドソン的言語哲学の射程に関する研究
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07610003
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
冨田 恭彦 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (30155569)
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Keywords | 反表象主義 / 観念説 / 志向性 / デイヴィドソン / クワイン / ロ-ティ / ロック / リ-ド |
Research Abstract |
本年度は以下の手順で研究を進めた。1.デイヴィドソンの言語哲学の基本的枠組を、クワインのそれとの比較において捉え直した上で、デイヴィドソン・ロ-ティ的反表象主義の要点を明確にした。この作業において、デイヴィドソンの師であるクワインから、私見に関する様々なコメントや資料の提供を受けた。また、その反表象主義が17・18世紀の観念説・表象説に一様にあてはまるわけではないという私見をめぐって、ロ-ティ自身とも意見を交換した。2.拙書『ロック哲学の隠された論理』およびその英語版“Ides and Thing"で指摘したロックの観念説の本質について、再度検討を行った。この過程で、前オックスフォード大学出版局ロック著作集編集主幹のヨルトン教授から、私見の細部に関する質問が数度にわたって寄せられ、その書評において私見を基本的に評価する旨が表明された。また、ロックを徹底した心像論者とするマイケル・エア-ズに対する批判についても、基本的に支持する旨の見解が寄せられた。3.以上の結果を踏まえて、ロック以降の観念説の検討に入った。ここではリ-ドの反観念説の論理が特に問題となった。つまり、リ-ドはわれわれの知覚の対象は「観念」ではなくて、「物」やその「性質」・「関係」であるとしたわけではあるが、これは、心の志向的性格を考えたとき、当然の結論ではある。しかし、この志向性を支える「内容」とか「質料」とか言われるものが、17・18世紀には「観念」や「表象」と呼ばれていたという可能性を考えるなら、このリ-ドの批判は、「観念」の背後にあった問題構制を単に回避するものと言わざるをえない。この点を明確にするには、デカルト以後の「観念」の用法を「志向性」の観点からもう一度洗い直す必要があり、現在、「近代観念説における自然学的論理とその変貌に関する研究」という研究課題の下に、平成8年度の科学研究費補助金を申請中である。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 冨田恭彦: "ロック" 宗像・中国編『西洋哲学史(近代編)』(ミネルヴァ書房刊). 89-94 (1995)
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[Publications] 冨田恭彦: "超越論哲学と分析哲学-デイヴィドソン的反表象主義と近代観念説の論理" 哲学(日本哲学会編). 45. 47-59 (1995)
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[Publications] 冨田恭彦: "「観念」の論理再考-デカルトにおける形而上学と自然学との間" 人間存在論(人間存在論刊行会編). 1. 111-121 (1995)
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[Publications] 冨田恭彦: "心像論的ロック解釈再考-エア-ズに答えて" 京都大学総合人間学部紀要. 2. 33-44 (1995)
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[Publications] 冨田恭彦: "観念形成における自由と創造性-ロックの観念説再解釈に向けての一つの試み" 竹市・金田編『久野昭教授還暦記念哲学論文集』(以文社刊). 47-68 (1995)
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[Publications] 冨田恭彦: "言語論的観念論と近代認識論-ロ-ティ・クワイン・エア-ズ・ウィルソン・ロック" 人間存在論(人間存在論刊行会編). 2. 81-90 (1996)
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[Publications] 冨田恭彦: "アメリカ言語哲学の視点" 世界思想社, 230 (1996)