1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610050
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Musashino Art University |
Principal Investigator |
藤枝 晃雄 武蔵野美術大学, 造形学部・美学美術史研究室, 教授 (40076211)
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Keywords | 抽象表現主義 / 芸術と社会 / モダニズム / メキシコ絵画 / シュルレアリスム |
Research Abstract |
本研究は抽象表現主義についての理論的な考察を目的としているが、それを支える実証的な調査として、アフリカン・アメリカン(黒人)ゆえに長らく等閑視されてきたノーマン・ルイスという抽象表現主義者の絵画が実現でき、かつその遺族の好意によって資料を入手することができたのは貴重な収穫であった。本年度の研究は、この画家を通して、またこの画家を始めとして後に抽象表現主義と称されることになる美術が、主として1930年代の大恐慌の時期に如何に社会的な問題と向かい合ったか、そしてこの問題を単に作品に反映するのではなく如何に芸術的に昇華させていったかという面での検討に集中した。これにはアフリカ美術、ネイティヴ・アメリカン(インディアン)美術、メキシコの壁画、シュルレアリスムが関わっており、現在、これに関する論文の執筆中である。本年度の研究中、抽象表現主義の主要な画家、マーク・ロスコの大規模な展覧会(東京都美術館、1996年2月〜3月)が開催されたが、それはロスコ芸術の軌跡を知る上で有意義であった。とりわけ、会期中に本研究者もパネリストとして参加した「マーク・ロスコ展記念シンポジュム」(同美術館1996年2月18日)は、この画家のみならず抽象表現主義全般にわたる色彩表現、絵画構造とその意味についての新たな手がかりを与えてくれるものであった。これについては、本研究の最終段階において改めてより緻密に論究されよう。15EA02:最後に、この「実績報告書」の「研究発表」欄に挙げ得るほどのものではないが、かって執筆したロスコと並ぶ抽象表現主義の代表作家、バ-ネット・ニューマン論を修正を施して本研究者の新著『現代芸術の不満』(1996年2月、東信堂)に収録したことを付記しておく。
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