1996 Fiscal Year Annual Research Report
近世大名家の教育における「奥」「表」関係の成立と発達に関する比較制度史的研究
Project/Area Number |
07610248
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高木 靖文 名古屋大学, 医療技術短期大学部, 教授 (30097729)
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Keywords | 城中規式 / 奥と表 / 近習の教養 / 御小納戸日記 / 城中教養 / 講釈 / 会読 |
Research Abstract |
本研究は、近世武家社会の教育文化を手がかりとして、その発達経緯と近代的素地の形成過程を解明しようとするものであり、平成7年度における研究成果に基づいて、諸大名家の日常的な奥向き教育の実態とそれに関わる伝統や慣行の分析を行い、学問所・藩校等の教育との一体性・関連性を明らかにすることを目的とする。とりわけ本年度においては、奥向き教育の実態とその発達の経緯を分析し、促進的要因と阻害的要因の関係について検討した結果、以下の諸点の知見を得た。 1,城中では、藩主やその子弟の学問・教育がまず中奥で開始され、側近(小姓・御小納戸)の学習活動が捕足的位置づけの中で組織された。場所を異にする諸種の講釈・会読が、そのような目的に対応していた。 2,それらは、決して好学な藩主の恣意によって開始され、学問熱の低下と共に終了したのではなく、典籍・日時を決め、参加者や参加形式に制限を加えつつも継続され、儀式化された。 3,幕末になると、城中の学習活動は盛んになり、教育組織と構造を欠くものの、城中はまるで「巨大な学校」の観を呈した。講釈・会読・輪講・素読などが頻繁に行われ、尾張家では、御廉中が「透き聞き」をすることもあった。 4,こうした傾向は、儒学の学習に留まらず、国学・有識故実・絵画・華道・座作進退・囲碁・音楽から武術の稽古にまで及んだ。 このような検討は、家政資料に拠らざるを得ないが、いずれも膨大であり、研究をさらに精緻にするためにはさらに多くの大名家を調査する必要がある。今後も、着実に個別研究を重ねたい。
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