1995 Fiscal Year Annual Research Report
英国大学拡張運動史に関する研究-大学拡張講座の組織と運営の分析を中心に
Project/Area Number |
07610291
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | The International University of Kagoshima |
Principal Investigator |
川添 正人 鹿児島経済大学, 社会学部, 教授 (20108608)
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Keywords | 大学拡張運動 / 地方大学 / 大学改革 / 大学拡張カレッジ / フェロ-制度 / 大学拡張講師 / 成人教育 / 大学構外教育部 |
Research Abstract |
1870年代の英国で始まった大学拡張運動は、英国の伝統的な大学の学内改革と深く連動するものであった。その中でも、アカデミック・スタッフの問題が重要である。ひとつは、当時、そうした大学は、過剰となりつつあったフェロ-(fellows)の処遇問題を抱えていたことである。ケンブリッジ大学拡張講座の計画を具体化し、かつ実践したステュアート(James Stuart)の構想には、地方に大学拡張講座を推進してゆくための地方センターをつくり、それを大学拡張カレッジ(university exten-tion college)にまで高めていき、そこに過剰になったフェロ-を常駐させて、フェロ-問題の解決を図ろうとする意図が明確にあった。しかし、実際は、そうした意図をもって創設された数少ない拡張カレッジ(Exeter College, Reading College, Colchester College, Nottingham College)は、大学拡張カレッジとして発展する方向をとらず、「大学(university)」としての方向を目指したのであった。つまり、フェロ-問題は依然として残ったのであり、この点の解明を進めた。 次に、大学卒業後、大学の教員ポストを目指す若者の問題があった。大学拡張講座の多くの講師たちは、そうした人々により構成されていた。拡張講師の身分、給与は不安定であり、将来展望もほとんど持てないような状況にあったが彼らは将来、大学のアカデミック・スタッフになることを夢みてそうした不安と苛酷な労働条件に耐えたのであった。この問題を1886年後半にオックスフォードで組織されたオックスフォード経済学会(Oxford Economic Society)の活動を分析することにより解明しようとしている。特に後者については、A.カンディシュ(A. Kandish)による未公刊の論文<‘Oxford Economists and the young Extension Movement' Oxford, 1979 (unpublished)>の存在が確認され、これを手掛かりにこの問題の解明を更に進めたいと考えている。今年度は、資料収集と併行しつつ、以上のような英国大学におけるアカデミック・スタッフの雇用と大学拡張運動に関わる問題解明にための基礎作業を行った。
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