Research Abstract |
この研究は,これまで十分に研究されてきたとはいいがたいアイヌ民族の小型毛皮獣狩猟滑動について,時期を近世末期に絞り,その状況の描写を試みようとするものである。 この目的を達成すべく,その第一段階として,本年度は小型毛皮獣(キツネ,テンなど)の狩猟具とくに罠に注目し,その類型化をめざすべく,平取町立アイヌ民俗資料館,北海道大学附属博物館,館蔵資料などの写真撮影,計測資料の調査,収集をおこない,写真および図面記録として集積することができた。また,旧記とくにアイヌ絵にも注目し,狩猟具とくに罠関係の記事,記録を収集することができた。 それらをもとに,罠の類型化をおこない,各部分の機能をふまえた形態という観点から北東アジア諸民俗のものと比較した。その結果,北東アジア地域自体,きわめて罠猟が発達した地域であること,地域によって特徴もみられる反面,「仕掛け弓」や「弾弓」と呼ばれるものに関しては,民族を越えて類似していることがわかった。 次年度は,そうした類似がなにを意味するものかを考察していく。アイヌ民族の狩猟活動について,とくに国家を形成した民族集団と,その周辺民族との相互関係という観点からとらえてみたいと考えている。 じつは,狩猟具の形態・機能分析およびそれに基づく類型化は,これまでにも研究代表者が関心を持って眺めてきたものであり,とくにその分類と歴史的意義については,おおまかな見通しを発表したことがある(出利葉・手塚1994,出利葉1995)。ただし,そこで扱った資料は少なく,実証性に乏しいものであった。今回,より多くの資料を調査し,量的保証をもった類型化への見通しをもつことができた。その結果,申請者のさきの見通しは,概略としては誤りではないことがわかった。次年度の調査後,整理し発表したい。
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