1996 Fiscal Year Annual Research Report
戦国時代における産業および文化の地方移入について-その移入を支えた人々と在地社会に反した影響-
Project/Area Number |
07610361
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Research Institution | Kanagawa Prefectural Museum of Cultural Histry |
Principal Investigator |
鳥居 和郎 神奈川県立歴史博物館, 学芸部, 主任学芸員 (30155600)
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Keywords | 戦国時代 / 地方文化 / 七条仏所 / 鎌倉仏所 / 後北条氏 / 文化移入 |
Research Abstract |
今年度は、東国における京仏師の活動を重点的に調査した。これは、(1)中世後期、仏像には造立銘が記されることが多く、歴史学の史料としても精度が高いこと、(2)立体的造形であるため東国と西国の技術的な比較や影響の分析を行いやすいことなどを理由としてである。 特筆すべき事項としては、天文8年(1539)には上野国で京都七条仏所の仏師による作例が確認され、天文24年(1555)から永禄12年(1569)にかけて下総国・上総国で8例の作例を確認することができた。これらの事から天文年間には京仏師の活動が関東に及んできたといえよう。さらに、天正10年代(1582-)になると、後北条氏一族である北条氏邦が檀那となる例も含み、七条仏師が武蔵国北部で数年にわたり、10数躰の造仏を行なっている。この地域はこれまで、後北条氏の造仏を行い、また、東国で最も勢力を有する鎌倉仏師の活動圏であったが、その絶対的優位性は影響を受けることになった。 また、陸奥国石巻に永禄11年(1568)銘のある京仏師の作例が存在することがわかった。石巻像はその大きさより、完成された像が運ばれてきたものと考えられる。近世になると、京都で作られた仏像が、関東や東北地方に「商品」として流通するようになるが、すでに16世紀中頃にはその萌芽が見られたといえよう。 これまで、戦国時代における東国の経済は単独に機能しているがごとくの印象があったが、実際には京仏師の活動や、移入された仏像をみても明らかなように、大きな動きの中に組み込まれており、文化的諸相もまた同様であったものと思われる。しかし、これら京仏師の影響は、後北条氏の本拠地であり鎌倉仏師の基盤である相模国およびその周辺には見られないことから、後北条氏は鎌倉仏師に対し何らかの保護を加えたものと思われる。
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Research Products
(2 results)