1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610394
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe College |
Principal Investigator |
清水 忠重 神戸女学院大学, 文学部, 教授 (20025076)
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Keywords | 黒人奴隷制 / 人種差別 / キリスト教 / 独立宣言 |
Research Abstract |
1、南部奴隷制の宗教的擁護論はトマス・ジェファソンの独立宣言の平等思想を否定することから出発する。ジェファソンはすべての人間には「道徳感覚」という資質が植えつけられていると主張して、道徳の基礎を「人間本性(human nature)」の中に求めた。つまり、人間の資質の面での平等を主張すると同時に、かれは神をもち出さない世俗的な性格の道徳を確立したといえる。 2、南部奴隷制の擁護論者たちは、このジェファソンの立場とはちょうど正反対のものを打ち出した。かれらは神の権威をもち出して奴隷制の正当性を基礎づけようとした。そのためには、まずなによりも神の権威の絶対性、超越性を主張しなくてはならない。(というのは、もし神以前に善悪の観念といったものが存在するとすれば、神はそうした普遍概念の中に埋もれてしまって、すべてのものの創造者という立場がとれなくなるからである)。神がすべての法(掟て)を定められたのであり、すべての物を創造されたのである。人間社会の善悪はすべて神(つまり具体的にいえば聖書の言葉)によってはじめて定められたのであるとする立場がとられることになる。この立場は、聖書の字句を文字通りに解釈するものである。この立場では奴隷制が悪であるかどうかは、人間の人道主義的な感情や内面的な良心などに照らして決められるべきことがらではなく、ただひとえに聖書がこの制度をどう見ているかによって決められると主張する。
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