1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610403
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
中村 友博 山口大学, 人文学部, 教授 (10113432)
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Keywords | 粗製土器 / 水神平式土器 / 条痕紋土器 |
Research Abstract |
東日本における縄紋・弥生の過渡期の問題は、有紋土器を素材にした編年研究が進展をみせたのに比べて、粗製土器の研究は低調である。そこで粗製土器のうち条痕による意図的な調整をもつ当該時期の土器を、本年はおもに関東地方を中心に観察してみた。 まず、条痕の原体となる工具についてであるが、条溝のひろきものは竹の表面、いわゆる細密なる条痕は割り板であることが多い。西日本ではそれが二枚貝ならびに巻貝を用いることが多いから、この事実は地域的と言わねばならない。したがって、当該時期に条痕で調整する土器が西日本から一元的に波及したと見なすことはできない。条痕紋土器として高名な東海地方の水神平式土器は、東日本における搬入品がそれと識別可能である。その他取材中に、絡条体をこすって引いた条痕があるとの意見があったが、目撃、確認することはできなかった。ただし有り得るかもしれないので、今後留意するに努める。 条痕の走行の方向性については、右下から左下にあがる斜め方向、上から下への縦方向、ならびにその複合、すなわち土器を反転して二度にわたって調整するものがある。西日本の粗製土器の調整方向は左上に上がる斜め方向だけだから、後二者の方向性も地域的なものである。 東日本の条痕粗製土器は、おおむね以上の要素が絡み合っていて複雑であるけれども、発見物ごとにそのうちのそのうち何かが顕著で、特徴的な表れ方をする。その現象を全体として整合した体系にまとめるにはまだいたっていない。
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