1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610435
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Research Institution | MEIJI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
日向 一雅 明治大学, 文学部, 教授 (90079426)
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Keywords | 縁起 / 円成寺縁起 / 円成寺弥陀霊応伝 / 知恩院縁起 / 中将姫説話 / 迎講 |
Research Abstract |
平成7、8年度にわたり、中将姫説話の検討、奈良円成寺の円成寺縁起・弥陀霊応伝・知恩院縁起・円成寺伽藍宝物略縁起・円成寺略言志の調査と翻刻、内容の検討をおこなった。その成果は明治大学人文科学研究所紀要に発表するところである。 中将姫説話に関しては、この伝承の展開の過程を追跡して、これが観無量寿経の韋提希夫人説話の翻案として成立し、後に継子譚と習合して独自な成長を遂げたことを検証した。 円成寺の縁起類については、円成寺縁起と弥陀霊応伝は内閣文庫と東京大学史料編簒所にそれぞれ明治期の写本があることを確認した。内閣文庫本は漢字カタカナ交じり文に直され、特定の字を誤読したりしているが、東大学史料編簒所本は大本の美麗な影写本である。円成寺縁起・弥陀霊応伝は同一人の筆跡であり、とにも慶長十七年(一六一二)直後の成立と見てよい。内容は円成寺縁起が円成寺の正史というべきもので、鑑真に従って来朝した虚瀧和尚による創建から慶長十七年までの寺史を記す。弥陀霊応伝は円成寺の本尊弥陀如来に帰依した十六人の僧侶の深い信仰生活を記す。知恩院縁起は円成寺と知恩院の略史、ならびに僧侶二人が師命によって文明十三、十四年(一四八一〜二)に朝鮮に渡り、大蔵経を請来したことを記す。成立は寛政元年(一七八九)。またこの時の航海記録である二合船日記の一部が残存する。これらは従来その内容を紹介されることのなかった資料であり、近世における縁起としてそれぞれ特色のあるものであり、縁起研究への貴要な資料であるといえる。
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Research Products
(2 results)