1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610463
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
神尾 美津雄 名古屋大学, 文学部, 教授 (50036430)
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Keywords | the twilight realme / femininity / the frame of reference |
Research Abstract |
18世紀から19世紀にかけて出現したロマン主義は既存の精神現象の改訂の時期であった。それは知覚の変動であり、おのれを意識することによって自律する自己意識の過剰なる氾濫である。これらの自己意識にはシニフィエとしての現象が蓄積し、その原因となるシニフィアンは特定されずに永遠に浮遊する運命にあることが明らかになった。ここにファッショニングする自己意識が登場することになる。意識は意識じしんを定義できないために、現象の形態そのものをおのれのファッションとして受容する傾向を帯びてくるのである。ここには意識を規制し、意識が依拠する準拠枠は存在しない。意識は奈落に彷徨するだけである。ここにもうひとつの自意識のありかたがある。れはゴシック小説に登場するヒロインの示す心理である。監禁されたゴシック小説のヒロインは自己と環境の差異が不分明な状態に置かれる。ヒロインは自分じしんの存在を放棄せざるをえない状況に置かれるのだ。自己存在は薄明地帯にあるわけである。このときヒロインに必要とされるのは「他者/性」を把握するための原型的人物である。この無意識的表象として選ばれたのは母であった。ここにまさにアンキャニな女性性の意識が登場することになるのだ。ゴシック小説のヒロインにとっては事件や謎は収斂する対象をもたない。主たる場を形成するゴシックの城は外側に標榜される男性性とはうらはらに内部は女性性を露出するしなやかな薄明地帯を形成する。感傷小説の系列を引くゴシック小説のヒロインはそのときはじめて女性としての自律性をえたのだ。マスキュリンな自意識は外界との軋轢のもとに内向し意識の奈落に潜行し、超自意識と意識とに階層化される。これにまっこうから対立するのがおのれの帰属証明を求めつづけるフェミニンな自意識なのである。このようにして18世紀から19世紀にかけて自意識のジェンダ化がしょうじ、複合的な人間観が登場したのである。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 神尾美津男: "知覚と想起-イギリスロマン主義における精神現象論-" 名古屋大学文学部論集. 41. 229-248 (1995)
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[Publications] 神尾美津男: "氾濫する自意識-イギリスロマン主義における人間像-" 名古屋大学文学部論集. 42. 301-316 (1996)
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[Publications] 神尾美津男: "薄明下のフェミニニティーゴシックヒロインの自己意識" 名古屋大学文学部論集. 43. 257-272 (1997)
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[Publications] 神尾美津男 共著: "Sesntimental, Gothic, Romantic" 英宝社, 147 (1997)