1995 Fiscal Year Annual Research Report
18、19世紀英国における中世主義の復興と変容の研究
Project/Area Number |
07610476
|
Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
不破 有理 慶應義塾大学, 経済学部, 助教授 (60156982)
|
Keywords | 中世主義 / ウェールズ / Thomas Gray / William Mason / Henry Newbolt / druidism |
Research Abstract |
当初予定していた第一の目的、すなわち18世紀に書かれた、自国の過去を題材とする作品、「英国」を舞台として、古代ブリトン人の宗教的指導者ドルイド僧が登場する作品の分析は、95年5月の日本英文学会において「中世復興の序曲-Welsh RevivalとThomas GrayとWilliam Mason」と題する発表によって、かなりまとめられたといえる。 18世紀の半ばに既にイングランドの文人がウェールズの文献へ関心を寄せていたことは、Thomas Grasyの″the Bard″ならびにWilliam MasonのCaractacusなどが発表されたことによっても裏付けられる。とりわけ、メイソンの作品ではローマ人が英国をローマ帝国の傘下に組み入れようとする時期に時代を設定し、最後のブリテン王カラクタクスに焦点をあてている点は注目に値する。新古典主義的傾向が良しとされた時代に、「野蛮」とされた英国土着の国王に光をあて、「野蛮」なのは、奴隷制を引くローマ帝国であると断じている。この力点の変化に、文化的にも英国固有の文化への回帰を読み取り、そこに自国の過去、中世への復帰を準備する精神的土壌がみられると考えるであろう。また1995年9月には国際中世主義学会にて19世紀におけるアーサー王伝説の変容を示す作品、Henry NewboltのMordred: a Tragedyを取り上げて発表した。これは当初8年度以降に予定していた方向ではあるが、18世紀から19世紀への中世主義の変容をたどる上で、アーサー王伝説の作品群の分析も同時並行で進めることも有効だと思われる。この論文は目下投稿中である。
|