1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07610479
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
川本 静子 津田塾大学, 学芸学部・英文科, 教授 (40055299)
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Keywords | ガヴァネス文学 / センセーション・ノベル |
Research Abstract |
ガヴァネスを主要人物の一人とする小説-すなわちガヴァネス文学-の系譜をたどり、そのガヴァネス像を通して「レディの理念」および結婚によって結ばれる男女の関係をめぐる時代の文化理念の手掛かりをつかみ、かつ小説という文学形式においてガヴァネスとい登場人物が果たした役割を明らかにする目的から、本年度はMary Braddon, Rhoda Broughtton, Mrs Henry Wood, Charlotte Yongeなど主として19世紀の大衆文学におけるガヴァネス像を考察した。ガヴァネスなる登場人物がその曖昧な社会的立場のゆえに「レディの理念」をめぐる人々の矛盾したスノビッシュな意識を顕在化する上で有効な装置として機能していること、また職場としての家庭に外部から入ってくるガヴァネスの状況設定が、センセーション・ノベルや推理小説における「秘密」のプロットの導入に貢献していることを明らかにし得た。今後は児童文学のジャンルにも考察の対象を広げ、大人の文学と同一のガヴァネス像を提示しているかどうか、あるいは何らかの相違が見られるとすれば、それは何によるものであるかを考察したいと計画している。
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