1995 Fiscal Year Annual Research Report
「先住民族の権利」の実現に関する具体的・比較法的研究
Project/Area Number |
07620013
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
常本 照樹 北海道大学, 法学部, 教授 (10163859)
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Keywords | 先住民族 / 先住権 / インディアン |
Research Abstract |
本年度の研究において、主としてアメリカ東部の先住民(インディアン)による土地回復運動の経緯について検討するとともに、オーストラリアの先住民の権利に関する基礎資料の収集・整理を行った。 アメリカ東部における土地回復運動の代表例としては、Maine Indian Claims Settlement Act of 1980がある。これは既に非先住民による土地所有が進行しているなかでの土地回復の事例として注目されるものであり、連邦政府が5400万ドルの基金を設立して、非先住民から任意買収による土地取得を行うこととされていた。しかし、その前提として、同法は、これにより当該部族の先住的土地権を消滅させることとしていたのである。 現在、同法の解釈をめぐっていくつかの問題が生じている。一つは、同法制定以前から稼働していた発電用ダムが原因で、同法により部族地となった土地の一部が水没等の損害を被っている場合に、ダムを所有する電力会社に賠償を請求できるか、もう一つは、部族所有地内でカジノを経営するにあたって、州にしかるべく配慮することを義務づけた連邦法の適用が、Settlement Actによって排除されるかどうか、である。 この事例は、先住的権利の主張によって生じる権利関係の錯綜を立法的に解決することは限界があることを示しているともいえるが、本来、永年にわたる権利侵害を一片の法律によって完全に解決することには無理があり、問題解決には持続的交渉のための「意思」と「場」が必要であると考えるべきであろう。 本年度の研究においては、他の事例によっても同種の知見を得ることができたが、来年度においては、さらにオーストラリア、カナダについて具体的制度の確立事情と運用の実際についての検討を続ける予定である。
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