1995 Fiscal Year Annual Research Report
1930年代ソ連在住日本人の粛清の規模とメカニズムについての研究
Project/Area Number |
07620055
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
加藤 哲郎 一橋大学, 社会学部, 教授 (30115547)
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Keywords | 旧ソ連 / 日本人粛清 / スターリン / 野坂参三 / 国崎定洞 / 1930年代 / 日ソ関係 / 山本懸蔵 |
Research Abstract |
初年度である平成7年度には、これまでの研究にもとづき、旧ソ連粛清犠牲者(行方不明で粛清された可能性のある者を含む)約80名のリストと個人票を、備品として購入したパソコンによって、さしあたり日本語でデータベース化し、一人一人の探求を開始した。 これまでその粛清経過がソ連側資料である程度明らかにされた日本人、(1)元東大医学部助教授国崎定洞、(2)日本共産党モスクワ代表山本懸蔵、(3)野坂参三夫人竜、(4)山本懸蔵夫人関マツ、(5)演出家杉本良吉、(6)女優岡田嘉子の6人については、引き続き資料収集・聞き取りを行い、(1)国崎定洞については医師川上武と共に伝記の決定版『人間 国崎定洞』(勁草書房)を完成し刊行した。 (5)(6)杉本良吉・岡田嘉子については、旧ソ連から貴重な獄中供述調書を入手した。 強制収容所から釈放されて旧ソ連で亡くなった(7)元樺太オハ鉱業所労働者永井二一については、新潟県で遺族から資料を入手した。唯一の強制収容所体験をもつ生存者である(8)寺島犠蔵氏は、95年5月に再来日したのでインタビューし、その協力で、新たに北海道出身元オハ石油労働者(9)安保由五郎が犠牲者であったことを、旧ソ連及び日本の遺族の証言をえて確定できた(その経緯は、95年7月14日『日本経済新聞』夕刊社会面トップで大きく報じられた)。 さらに、北海道・東北出身者中心に遺族現地調査を行い、北海道新聞社・毎日新聞社の協力を得て、(9)オハ鉱業所労働者須藤政尾、(10)同小石濱蔵の遺族をみつけ、新たな資料を発掘した。(8)須藤については、旧ソ連在住の息子ミノル=ミハエル氏を通じて、小石については函館在住の遺族とモスクワの粛清犠牲者救済NGO機関メモリアルを通じて、それぞれソ連検察局での法的「名誉回復」措置まで進み、犠牲者の粛清事情や命日を確定できた(『毎日新聞』『朝日新聞』『北海道新聞』等で報道)。 なお、約80人の日本人粛清犠牲者のリスト及び略歴は、現時点までの研究をふまえ、近刊の『日本社会運動史人名大辞典』(日外アソシエ-ツ)に収録されることになった。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 加藤 哲郎: "国境を越える夢と逆夢" 月刊百科(1995・7). 第393号. 36-40 (1995)
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[Publications] 加藤 哲郎: "国崎定洞" 思想の科学(1996、3). 通巻534号. 45-49 (1996)
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[Publications] 川上武・加藤哲郎: "人間 国崎定洞" 勁草書房, 408 (1995)