1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07630006
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
宮川 努 一橋大学, 経済研究所, 助教授 (30272777)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深尾 京司 一橋大学, 経済研究所, 助教授 (30173305)
浅子 和美 一橋大学, 経済研究所, 教授 (60134194)
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Keywords | ケインズ経済学 / 価格の硬直性 / 海外直接投資 / モラル・ハザード / アドバース・セレクション / ゲーム論 / 不完全雇用 / 金融システム |
Research Abstract |
本研究の目的は、最近のマクロ経済学の成果をベースに、日本経済のマクロ的変動を捉え直そうとすることにある。最近のマクロ経済学は、「価格の硬直性」を前提とした伝統的なケインズ経済学を離れて、価格の自由な変動の下でマクロ現象を取り扱っている。 90年代に入ってからの日本経済は、株価、地価などが急落し、まさに価格の過剰な変動下で、設備投資の大幅な減少や不完全雇用の問題がおきている。研究代表者の宮川は、こうした問題意識の下で、まず近年の設備投資の大幅な変動に着目し、ケインズ以来の投資理論とその実証研究について調べた。この設備投資に関するサーベイでは、従来の伝統的なケインズ型投資理論の説明力が低下していること、わが国の設備投資の場合は、為替レートや地価の変動が大きく影響していることを指摘している。研究分担者の浅子は、こうした問題意識から地価が設備投資行動にどのような影響を与えるかについての実証分析を進めている。 加えて近年の設備投資の問題で無視できない現象は、海外直接投資の増加である。研究分担者の深尾は、電気産業における海外生産がどれだけ輸出を代替しているかを実証的に検討した。この研究において、深尾は欧州においては海外生産と輸出は代替的だが、アジアにおいては補完的であるとの結果を得ている。 また株価、地価の大幅な下落は、わが国の金融システムを大きく傷つけている。宮川及び浅子は、こうした金融システムの変化がマクロ経済にどのような影響を及ぼすかについて、モラル・ハザードやアドバース・セレクションなど近年のゲーム論から導かれる成果を銀行行動に適用してマクロ経済の変動を理解する研究をおこなっており、来年度にはその成果が報告できる予定である。
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[Publications] 浅子 和美: "金融市場の変貌とマクロ経済の安定性" 堀内昭義編「金融の情報通信革命」. 近刊. (1996)
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[Publications] 浅子和美(國則守生、松村敏弘共著): "地球温暖化と国際協調-合意形成の条件" 宇沢・國則編「制度資本の経済学」東京大学出版会. 231-261 (1995)
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[Publications] 深尾 京司: "海外生産と輸出の代替性について-実証研究のサーベイと今後の課題" 通産レビュー. 5. 185-199 (1995)
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[Publications] 深尾 京司: "日本企業の海外生産活動と国内労働" 日本労働研究雑誌. 2-12 (1995)
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[Publications] 深尾京司(程勲共著): "直接投資先国の決定要因について:わが国製造業に関する実証分析" ファイナンシャル・レビュー. 38. 1-31 (1995)
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[Publications] 宮川 努: "設備投資分析-理論・実証の蓄積と今後の課題-" 一橋大学経済研究所 Discussion Paper Series A No.317. (1995)