1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07630083
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高木 信二 大阪大学, 経済学部, 教授 (20226749)
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Keywords | 外貨割当制度 / 金本位制 / 日本の為替制度 |
Research Abstract |
平成8年度は、(1)戦後固定相場制下におけるわが国の外貨割当制度の実証分析と(2)戦間期の変動相場制(特に、金輸出解禁と再禁止)に関する文献研究を行った。 外貨割当制度については、制度の仕組と変遷を概観し、1950年代末から60年代初頭にかけて、制度がいかに自由化されたかを記述した。さらに、外貨割当制度が1950年代における国際収支危機の際にどのように政策手段として使われたかをまとめ、国際収支調整の手段として制度がどれほど効果的であったかを回帰分析によって検定した。国際収支の赤字が国内所得と国内需要との差であることを踏まえると、外貨割当制度が国際収支赤字を縮小するためには、輸入財の国内価格が上昇することによって、国内需要を低下させなければならない。反面、国際収支の赤字縮小がデフレ的マクロ政策によってもたらされるのであれば、輸入財の価格は低下するはずである。この簡単な枠組みの中で回帰分析を行うと、実証結果は、1950年代初頭では、外貨割当制度はある程度の赤字削減効果(輸入財の国内価格の上昇)が認められるものの、制度の自由化とともに、1950年代末から60年代初めにかけて、赤字削減の効果が失われたこと(輸入財の国内価格の下落)が示された。この研究成果は論文の形にまとめ、二、三の研究会において発表した。 次に、戦間期の変動相場制度に関しては、金本位制離脱、金本位制復帰、金本位制再離脱に関する膨大な当時の文献を集め、整理するという作業を行った。1920年代の最大の政策課題は金輸出の解禁であり、金輸出が解禁された後は、その経済的効果に関する論争であった。1930年代に入ると、いかにして金輸出が再禁止されたかが中心的問題になる。現時点では、研究の成果(特に、経済的背景に照らして見た政策論争と為替政策)を30頁ばかりの論文にまとめている段階であり、平成9年度において論文を完成させ、公刊する予定である。
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