1996 Fiscal Year Annual Research Report
銅酸化物超伝導体の混合状態における局所磁場分布の電子スピン共鳴による観測
Project/Area Number |
07640496
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
西田 昭彦 福岡大学, 理学部, 助教授 (90131838)
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Keywords | 銅酸化物超伝導体 / 混合状態 / 局所磁場分布 / 電子スピン共鳴 / 不均一性 / 不可逆特性 |
Research Abstract |
本年度は、前年に作製したY系銅酸化物超伝導体の様々な試料についてのESR測定を中心に研究を行った。 具体的には、1.945゚C,12時間の焼結による標準焼結体、2.繰り返し処理による高配向試料、3.自己フラックス法による単結晶体の3種類である。線幅が充分に狭く強いESR信号を与える、DPPHラジカルをスピン・プローブとしてYBa_2Cu_3O_<7-δ>超伝導体表面に薄く分散させ、混合状態での局所磁場分布の影響を探った。まず焼結体試料についてESRを観測したところ、超伝導転移温度T_c以上ではシュープであったESR線形がT_c直下への冷却によって、不均一な広がりを生じることが観測された。しかしこの不均一なESR線形は温度の低下とともに、ダブルピークが顕著になったことから、表面の凹凸や結晶粒界の影響なども含めた磁束配列の不規則性が大きく効いていることが考えられた。 そこで、不均一の影響を受けにくいと思われる、単結晶体について同様の測定を行ったところ、T_c以下での線幅の拡がりは極めて小さいことが分かった。従って、焼結体表面での磁場分布においては、理想平衡な混合状態における三角磁束格子に由来する局所磁場以外の寄与が大きいと結論された。 さらに高配向試料について測定を行ったところ、焼結体の場合よりも一層大きな線幅の拡がりが観測された。走査型電子顕微鏡による観察などにより、大きな線幅は、配向過程において生じた異方的なボイドに起因している可能性が考えられた。また、試料中を貫く磁束の不可逆特性や臨界電流密度との相関を調べるために、振動試料型磁力計による静磁気測定も行い、局所磁場分布の様子を総合的に検討した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Akihiko Nishida: "Vortex Dynamics and Frequency-Dependent ESR Anomalies in Tl_2Ba_2Ca_2Cu_3O_<10>" Advances in Superconductivity. 8. 591-594 (1996)
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[Publications] Chihiro Taka: "Observations and Measurements on YBa_2Cu_3O_<7-δ> Single Crystals with SEM and VSM" Fukuoka Univ.Sci.Rep.26. 89-95 (1996)