Research Abstract |
"古東京湾"の堆積物である更新統下総層群の堆積相解析から堆積シークェンスを求め,その堆積シークェンスの形成を支配する絶対的海水準,堆積物供給,構造運動の関係を明らかにした.下総層群は下位より,地蔵堂層,薮相,上泉相,清川相,木下相から構成され,それぞれ河川相,エスチュアリ-相,三角州相,外浜-海浜相などの堆積相から成る.また,それぞれ下総台地の中央部にある村田川を挟んで南部地域と北部地域では,異なる堆積システムが発達する.特に,下総層群中部の上泉層と清川層(および横田層)には,河川,エスチュアリ-,三角州,河口潮汐砂堆,外浜-海浜およびバリアー島システムなどが認められ,これらは2つの堆積シークエンスを形成していることが明らかになった.これらの堆積シークエンスは酸素同位体比曲線のステージ8-6の間に形成され,氷河性海水準変動に強く支配されている.また,これらの層準の示標テフラの追跡によって,下総台地で同時に異なるタイプの堆積シークエンスが発達したことが明らかになった.すなわち,下総台地の南部地域の堆積シークエンスは,三角州と河口潮汐砂堆システムで,北部地域はバリアー島システムで特徴づけられる.また,南部地域は,相対的に堆積物供給量と沈降運動が大きい(high subside nce - high sediment flux),北部地域は,堆積物供給量と沈降運動の小さい(low subside nce - low sediment flux)堆積シークエンスが発達する.このように,上泉層と清川層(および横田層)にみられる堆積シークエンスは,氷河性海水準変動に支配され,その地域差は堆積物供給量と構造運動の違いが反映される.
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