1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07640829
|
Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
東 正剛 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 教授 (90133777)
|
Keywords | 精子競争 / 交尾回数 / CAP-PCR / DNA指紋法 / アリ / 社会進化 / Polyandry / monandry |
Research Abstract |
本研究は、1)雄間精子競争の前提となる多数回交尾を確認するための方法の開発、2)その方法を用いて多くのアリの雌の交尾回数推定、3)精子間競争が存在する可能性を示す異常精子の発見、を主な目的として行われた。まず、交尾回数の推定法としては、CAP-PCR DNA指紋法が最も良いという結論に至った。その最大の理由は、ごく微量のDNAで推定できるためトフシアリやヒメアリのように非常に小型のアリでも1個体について数回の確認分析が出来ること、再現性が高く、信頼性の高い結果が得られること、分析が比較的容易であることなどである。この方法を用いて10種以上のアリについて交尾回数を推定したところ、当初の期待に反してほとんどのアリの雌が雄1個体としか交尾しないことが判明した。恐らくこのためと思われるが、多数のアリの精子を観察したにもかかわらず、異常精子など精子間競争の証拠となるものは発見できなかった。 しかし、南米産ハキリアリ族のうちAtta,Acromyrmex,Sericomyrmexの3属では雌の交尾回数2回から3回という推定値が得られた。さらにこの族ではAttaなど社会性の高度なグループでは複数回交尾であるのに対し、Cyphomyrmexなど原始的なグループでは1回交尾という結果を得ており、社会進化と交尾回数の間に密接な関係のあることが示唆された。また、この族の受精のうは他のアリ類に比べやや複雑な構造をしており、その機能的な意義という新たな課題を見つけることができた。 これまで多数回交尾の進化に関してはいくつかの仮説が提出されているが、本研究により支持されるのは1) コロニーの巨大化に伴って、女王に十分な数の精子を送り込むため、2)コロニー内の遺伝的多様性を分業体制の複雑化の間の相関性、という2つの仮説であった。今後、特に2)を確認するための準備を進めている。
|
-
[Publications] Murakami,T., Ishibashi,Y., Abe,S., Yoshida,M.C. & S.Higashi: "CAP-PCR useful for analyzing the Kim related uess of a small ant species" Naturwissemschaften. 84. 32-34 (1997)
-
[Publications] Murakami,T. & S.Higashi: "Social Organization in two primitive,attime ants,Cyphmy rmex rimosal and Myimicocrypta ednaella,with reference to their fungus strates and fondresouce" Journal of Ethology. 15. 17-25 (1997)
-
[Publications] Komeno,Y., Higashi,S., Ito,F. & H.Miyata: "Effect of colony size on the number of ganergates in the gueenless ponerime ant Rhytidoponera acrata" Insectes Socianx. (in press).