1996 Fiscal Year Annual Research Report
植物の生活環制御と集団分化機構に関する発育生理および遺伝的解析
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07640830
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石栗 義雄 東北大学, 遺伝生態研究センター, 助手 (90006015)
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Keywords | タネツケバナ / 生活環制御 / 花芽形成 / 集団分化 / 酵素多型 / 遺伝的類似度 |
Research Abstract |
植物の生活環は生育する環境に対応して調節され、うまく適応できた個体がその環境に集団を形成できる。このような集団分化は植物がもつ形質発現の可塑性によるが、可塑性の幅や程度の大きさが種の生育域の広さあるいは生育期間の長さと強く関連する。本年度の研究では自然日長の年周期の変化に対応して地理的に異なる集団が如何なる反応性を示すかを検討すると共に、このような適応的な形質発現の遺伝的な対応を酵素多型から検討を試みた。 タネツケバナ7集団を播種期を変えて自然光型温室で栽培し、規則的に変化する自然日長と開花までの日数(到花日数)およびそれに伴う形質発現を比較した。集団あたり約130個体を対象にした結果、北緯38°以北の集団は播種期による到花日数の差が大きく、対照的に北緯38°以南の集団はその差が極めて小さかった。さらに近接した緯度上で気候帯が異なる日本海および太平洋沿岸による到花日数の差が小さく、到花日数に関わる集団分化は気候帯より緯度のクラインによって規定されているといえる。この結果は高緯度の集団の生活環制御が光周性に強く依存しているが低緯度の集団ではサイズ依存による生活環の切り替えを図っていることを意味する。したがって、最小到花日数を示す長日条件下では集団間の変動系数が7.89であるが、最大到花日数を示す短日条件下では27.78であり、約3倍の集団間の変動を示す。これらの結果を基に集団間の遺伝的な類似性を酵素多型の解析から検討した。近畿以北の17集団を対象に24酵素種について調べた結果6酵素種に多型が見られた。ここから集団間の遺伝距離を算出し、主成分分析およびクラスター分析を行い、さらに遺伝距離と到花日数から算出した距離との相関を検討した。その結果、これらの間に正の相関が検出され、タネツケバナ集団に見られたクラインが集団間の遺伝的類似性による可能性が示唆された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] H. Kudoh: "Phenotypic plasticity in age and size at maturity and its effects on the integrated phenotypic expressions of life history traits of Cardamine flexuosa (Cruciferae)" J. Evol. Biol.9. 541-570 (1996)
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[Publications] H. Shibaike: "Population differentiation in floral and life history traints of Oxalis corniculata L (Oxalidaceae) with style length polymorphism" J. Plant Res.109. 315-325 (1996)