1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07640895
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
永波 誠一 北海道大学, 電子科学研究所, 助教授 (30174030)
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Keywords | 昆虫 / キノコ体 / 連合記憶 / 情報処理 / モジュール構造 / 単位構造 |
Research Abstract |
ゴキブリのキノコ体による高運動制御機構を明らかにする研究の一環として、本年度は昨年度に引き続き慢性埋め込みワイヤ電極を用いて自由行動中のキノコ体ニューロンの活動の解析を進めるとともに、キノコ体の神経回路の詳細についての組織学的な検討を行った。従来、昆虫のキノコ体が内在ニューロン(ケニオン細胞)のタイプによって3-4の領域に分割できることは知られていたが、それ以上の内部構造については明らかになっていなかった。しかし今回のゴルジ染色や渡銀染色法等を用いた研究の結果、ワモンゴキブリのキノコ体の出力部位にはサイズの異なる2種類の単位構造の繰り返しがあることが始めて明らかになった。第1の構造は、数百個のケニオン細胞の軸索から形成される厚さが1μmないしそれ以下の薄いシートである。キノコ体の約20万個のケニオン細胞は並列に配置された200-1000のシートに組織化されていると推定された。シートは集まってより大きなモジュール構造を形成する。第2の構造単位は厚さが3μmないしそれ以上の薄板(slabs)で、明るい板と暗い板がほぼ等間隔で交互に並んだ薄板構造として観察された。薄板の数は約30であった。ケニオン細胞からシナプスを受ける出力ニューロンの多くは薄板の幅に対応して分節化した樹状突起をもち、特定の幾つかの明板または暗板のみからシナプスを受けると考えられ、薄板はキノコ体からの出力の単位を成すと推定された。本研究は昆虫のキノコ体が哺乳類の皮質と同様に発達したモジュール構造を持つことを始めて明らかにしたものであり、脊椎動物と無脊椎動物で記憶などの高次機能を担う脳の構造に進化的収れんがあることを示唆している。
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[Publications] M. Mizunami: "Gain control of synaptic transfer from second- to thied-order neurons of cockroach ocelli" J. Gen. Physiol.107. 121-131 (1996)
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[Publications] M. Mizunami: "Modular organization of the mushroom body in an insect" 比較生理生化学. 13. 13 (1996)
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[Publications] R. Okada, M. Mizunami: "Analysis of the correlation between behavior and neural activities of mushroom bodies by chronic recording in Americal cockroaches" 比較生理生化学. 13. 13 (1996)
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[Publications] M. Mizunami: "Cellular organization of the mushroom body in an insect" Neurosci. Res.20. S247 (1996)
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[Publications] M. Mizunami, R. Okada: "The mushroom body of the cockroach consists of a number of structural units" Zool. Sci.13. S120 (1996)
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[Publications] R. Okada, M. Mizunami: "Analysis of the correlation between behavior and neural activities of mushroom body by using chronic recording in American cockroaches" Zool. Sci.13. S105 (1996)
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[Publications] 水波誠他12名: "行動生物学" 朝倉書店, 143 (1996)