1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07640911
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
小林 健一郎 上智大学, 理工学部, 講師 (30158901)
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Keywords | 両生類 / 変態 / 皮膚 / プテリン |
Research Abstract |
昨年度は、ウシガエル(Rana catesbeiana)のプテリン(pterin)を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によって分析した.変態前後の皮膚の主要なプテリンがビオプテリン(biopterin)であること、その90%以上が安定な酸化型として存在することが示された.この結果をふまえ、本年度は以下の研究を行った. 1.ウシガエル幼生の変態にともなう、飼育水のプテリン排出を調べた.二週間の変態期間に排出される主要なプテリンはビオプテリンであり、その総排出量(150μg)は変態開始前の幼生尾部に含まれるビオプテリン量(120μg)にほぼ匹敵した.一方、体部皮膚のビオプテリン量は、幼生では190μg、変態終了後の小ガエルでは220μgであり、変態前後であまり変動しなかった.以上の観察から、変態期に排出されるプテリンが主として退縮しつつある尾部に由来するものと考えた.皮膚にはイソキサントプテリン(isoxanthopterin)も多いが、排出されるイソキサントプテリンもビオプテリンに次いで多い.このことも、上記の結論を支持する. 2.プテリン排出は、尾部退縮が最も盛んな時期に起こる.しかし、尾部皮膚の退縮と皮膚のプテリン含有細胞の分解との時間的相関及び、プテリン排出に至るまでの機構については、組織学的な観察をふくめてさらに検討が必要である. 3.幼生期の皮膚に含まれる種々のプテリン化合物が成体期の皮膚にも見いだされる.しかし、幼生の皮膚には成体の皮膚に比べてイソキサントプテリンが多く、逆に6-ヒドロキシメチルプテリン(6-hydroxymethylpterin)が少ないなどの差異が認められた.このことは、幼生期と成体期ではプテリン代謝が部分的に変化することを示唆している.代謝に関わる酵素を含めた今後の検討が必要である. 以上、本研究によって、変態時にホルモンによって誘起される無尾両生類の尾部退縮機構の解明に、プテリン排出現象が有用であることが示唆されたと思われる.
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Research Products
(1 results)