1996 Fiscal Year Annual Research Report
海産魚の口腔保育習性と活用機能からみた骨格系構造の進化学的研究
Project/Area Number |
07640947
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Research Institution | The Yokosuka City Museum |
Principal Investigator |
林 公義 横須賀市自然博物館, 技幹, 主任学芸員 (40083109)
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Keywords | テンジクダイ科 / 繁殖行動 / 帰巣習性 / 口腔保育 / 骨格系 / 形態機能 / 系統進化 |
Research Abstract |
平成8年度は、研究材料の収集と現地での潜水観察(水中VTR撮影を併用)を鹿児島県の奄美大島沿岸域(瀬戸内町阿鉄湾)で行った。テンジクダイ科魚類相の調査を近年実施してきたなかで、奄美大島の阿鉄湾には多様な環境水域が存在するので、およそ本科魚類20属が確認・採集された。本研究期間では、最も個体数が多く保育習性や行動観察がしやすい2属7種を選定した。フィールドにおける2属7種の保育習性については、雄が雌より卵塊を受けとり、ひき続き雄のみが口腔保育を行うことが観察された。またこの習性は実験水槽(水族館の飼育魚を含む)でも確認できた。本科魚類のなかには通常「群れ・群がり生活」をするものと「単独生活」するものとがあり、番形成に関してそれぞれの生活型による相違の有無を観察した。その結果、産卵期においての番形成は「群れ・群がり生活」をする種のほうが「単独生活」をする種よりも複数回の番形成が有利であることが確認された。また2属4種についての日周期活動の研究(24時間観察)では、本科魚類の主たる活動習性は夜行性であり、日没後には行動が活発になり、日昇前に活動が停止することが判った。夜間の行動は主に採餌活動であり、その行動範囲は各種共に広範囲に及んでいた。また生活型の相違により、活動習性と活動時間、活動の終始時間に明瞭な差がることも判明し、本年度の主たる目的である保育習性と関連した行動解析にかかわるデータの集積が行えた。また本研究期間中にPterapogon属の口腔保育習性を水族館水槽において観察した。本属魚類は、雄の口腔から浮出した仔魚が、幼魚に成長したのちも雄の口腔内に危険回避することが確認された。また今後、幼魚に成長したのちも雄の口腔内に危険回避することが確認された。また今後、本属の頭部骨格系の詳細な観察により、機能や構造分化の方向性がさらに明瞭になることが期待できることが判明した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 林 公義: "日本(琉球諸島)初記録のテンジクダイ科魚類の1種" 横須賀市自然博物館研究報告. 44号. 47-53 (1996)
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[Publications] 林 公義: "平成7年度希少水生生物保存対策試験事業 日本の希少な野生水生生物に関する基礎資料(III)淡水魚類" 社団法人 日本水産資源保護協会, 分担722-227 (1996)