Research Abstract |
本研究の目的は,超音波によってフーリエ変換を行う手法(音響的フーリエ変換)を新たに提案し,ガラスやステンレスの製品等の光学的に映像化が困難な物体や火災,霧内,汚泥中等極限状況下に存在する物体をリアルタイムに映像化する手法を開発することである. 本科学研究費交付当初の計画では,本年度中に計算機により本アルゴリズムの検証,システム製作のための各パラメータの決定を行い,実験システムの製作を開始することを予定していた.これに対して,本年度行った研究と成果について以下にまとめる. まず,本アルゴリズムの検証を行なうために計算機上で簡単な幾何学図形(円,四角,三角等)とアルファベット(A〜Z)を被検体として映像化を行なった.その結果,各々の被検体が良好に映像化され,本アルゴリズムの正当性が確認できた. 次に,実際にシステムを製作するにあたり,計算機上でそのパラメータを決定するための模擬実験を行なった.その際,様々なパラメータを用いて上述の被検体を映像化し,得られた結果を主観的に評価することでパラメータ決定を行なった.以上の結果から,送信,受信の素子数は,217個,1024個,各々のサンプリング間隔は,30mm,16mm,送信と物体,物体と受信間の距離は,600mm,500mmというパラメータを決定した. これをもとに実験システムの製作を開始し,現在も続行中であるが,この過程において以下のような問題点が明らかとなった.音響的フーリエ変換の実現には,受信面の1点に照射超音波が集束するような位相わ送信波面に与える必要があり,本システムでは,竹ひご(直系4mm)の先に超音波振幅を貼り付け,その出し入れで位相遅延を制御している.しかしこの手法は,装置の製作が容易な反面,微妙な位相調節が非常に煩わしく,なかなか所望の高精度な波面を形成し難い,そこで現在,この問題を逃れる方法について検討している.
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