Research Abstract |
小麦胚芽より抽出し,精製したリポキシゲナーゼは,純度60%,分子量97,000,至適pH6.6,リノール酸基質で比活性50Uを示した。この標品を用いて,酵素活性に対する6種の界面活性剤(Tween20,Tween80,Triton x-100,コール酸ナトリウム,3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホン酸(CHAPS)及び,炭素鎖長8〜16のショ糖脂肪酸エステル(SE)の影響を調べ,市販ダイズリポキシゲナーゼと比較した。酸素反応をコムギ及びダイズ酵素の至適pH(それぞれpH6.6と9.0)で進めた時,コムギ酵素では6種いずれの界面活性剤においてもそれらの濃度増加と共に活性が減少した。特に,非イオン性界面活性剤による減少が著しかった。一方,ダイズ酵素では,コムギ酵素を失活させる濃度のTweenやTriton,コール酸で殆ど影響されなかった。しかし,CHAPSとSEではコムギ酵素と同様の阻害を受けた。基質分散性のpHによる影響を消去するために,両酵素の至適pHからずれたpH7.3で反応を進めた時,ダイズ酵素にもコムギ酵素同様の非イオン性界面活性剤やコール酸による活性低下が見られ,両酵素に対する活性剤の影響はよく似たものになった。両酵素に強い阻害を示したSEについて,脂肪酸鎖長の影響を調べたところ,両酵素共に,鎖長8から12にかけて著しい活性低下が起きた。鎖長12以上ではアルキル鎖長の効果がなかった。鎖長12のSEは,両酵素に対して拮抗型の阻害を示し,似たK_i(コムギ:K_i=0.36mM,ダイズ:K_i=0.30mM)を示した。 以上より,コムギ酵素はその至適当pH下でダイズ酵素と異なり界面活性剤で強く阻害されること,SEではダイズ酵素と同様の拮抗型阻害を受けることが分かった。これらの結果は,活性測定時の界面活性剤の選択や活性調節への界面活性剤の利用に示唆を与えるものである。
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