Research Abstract |
1.コムギ胚芽リポキシナーゼの精製法を検討した。これまでの精製には,ゲルろ過,イオン交換,等電点,アフィニティの4種のクロマトグラフィ等を利用し,純度60%の酵素標品を入手した。今年度は,第一段階でブチルトヨパールによる疎水クロマトを導入することで効果的に酵素が分画でき,さらに,限外ろ過,イオン交換HPLCを併用するだけで短時間に多量の標品を得る方法を確立した。SDS-PAGE上,数本のマイナ-バンドが見られるものの一本の濃厚なバンドが認められた。標品の比活性は70U,活性回収率は30%。 2.リポソーム系での酵素反応を検討した。平成7年度にはミセル分散系で酵素反応を行ったが,今年度は生体膜モデルとしてリポソーム系基質を利用した。先ず,精製したダイズレシチンをリン酸ナトリウム緩衝液,pH7.0に分散させ,超音波処理して,平均粒径30nmの単層リポソーム(電顕観察)を調製した。このリポソームにはリノール酸をレシチンと等モルまで組み込めること,脂溶性抗酸化剤も容易に組み込めることを確認した。酵素反応は,リポソーム系リノール酸を基質として,pH6.6, 25℃で4分間反応を行い,生成した共役ジエンをHPLC/234nmで測定した。リポソームに組み込んだリノール酸濃度の増加に伴い,過酸化物の生成量が増加し,リポソーム基質は酵素基質として有効であることを確認した。Tween20よるミセル分散系に比べ,リポソーム系では過酸化物量が少なく,膜界面での酵素の代謝回転はミセル系より低いことがわかった。また,リノール酸濃度を一定にして,レシチン濃度を上げると過酸化物量が減少し,レシチンは酵素反応を阻害することが示唆された。リポソーム系での酵素反応には,基質の自由度やリポソームを構成するリン脂質の性質が大きく影響すると思われる。データーを蓄積し,ダイズ酵素の知見と比較する予定である。
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