1996 Fiscal Year Annual Research Report
森林環境の変化が林地の保水および土砂扞止機能に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
07660198
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
日浦 啓全 高知大学, 農学部, 教授 (30046495)
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Keywords | 森林の水源かん養機能 / 森林の土砂扞止機能 / 水質 / 侵食 |
Research Abstract |
森林のもつ水源函養機能と土砂扞止機能を定量化するために、2つの項目について観測を実施した。前者は、高知県高岡郡梼原町川井水源地に設置された量水施設と雨量観測からなる観測施設での観測を継続して実施した。研究期間中に何らかの人為が森林に加えられれば、そのことによる流出への影響が直ちに出て来る。さらに、流出水の水質にも何らかの影響が現れる平成8年度の観測項目は、10分ごとの水位と降雨の観測と、ほぼ1回/月の渓流水の水質と豪雨時に試験流域から流出する土砂による河床変動状況の観測である。後者は、鬱閉して林内が暗くなったため下層植生の消えたしまったヒノキ林である。ここでは地表が裸地化しており降雨や落石等により表土の撹乱・移動の始まっている場所である。ここに、1m×1mのプロットを設け、ほぼ2カ月に1回の割でこのプロットに流入及びこのプロットから流出していく土砂量の推移状況を調べた。 今年度明らかになった成果は以下のようである。すなわち前者についてであるが、今年度は当該流域内での林業関係の施業は年明け早々に、量水堰上流左岸側に延長500mほどの作業道が開設され、わずかばかり間伐作業が進んでいた他はなんら手が加わっていない。試験流域には今年度何度かの中小の出水があったが、上流からの土砂の流出は見られなかった。逆に、量水堰直上流の治山ダムの堆砂地で若干の侵食現象が見られた。これは、ダム施工時の掘削土を竣工後ダム堆砂地に残土として埋め戻したものが2次侵食を受けたものである。試験流域内の山腹には崩壊地もないことと、森林の状態も良好なことを考慮すると、森林の水土保全機能が十分に発揮されたためである。水質については、上記の間伐作業の影響はなく、出水によっても溶存物質の濃度が薄まっただけにとどまっていた。後者のヒノキ林での土砂移動形態としては、雨および風による不安定土砂の斜面下方への移動が見られている。1年少しの観測の結果であるが、冬季にプロット内への流入が多く、その量は降雨量とは無関係であって大きな値を示す。プロットからの流出は当然期間内の降雨によるものであるが、侵食量は流入量の1/4-1/6にしか達しておらず、減少はサイクリックな動きを見せている。
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