Research Abstract |
横圧縮大変形を与えた木材の年輪,早・晩,細胞集合体の変形挙動,閉塞壁孔の変形,破壊様式など明らかにすることは,木材の圧密加工,圧縮法による木材の浸透性の改善などを理解する上で極めて重要なことである. 本研究は,横圧縮大変形による年輪,細胞の変形特性を明らかにする目的で,気乾,飽水の2条件下で調整したセット材及びその回復材についてCCDカメラシステムを導入して観察実験を試み,その特性を検討しているものである. 供試材には,ヒノキ,カラマツ,ベイマツ材を用い,圧縮率範囲0〜50%について検討を加えた.得られた結果を要約すると,以下のようになる. 1.圧縮処理材の年輪,早・晩材の変形は,局所的な座屈の発生から始まり,座屈の発生する年輪は,年輪幅,晩材率などに無関係で,座屈幅は圧縮率に依存する. 2.年輪内のひずみは,圧縮率50%の範囲で,すべて早材部ひずみとして達成される. 3.飽水材の場合,晩材率の小さい材ほど年輪内に発生する座屈の発生位置が当該年輪の晩材に近い位置で発生する.これは,年輪変形に早・晩材構造が関係を持つことを示唆している. 4.年輪内のせん断変形は,細胞の形状と関係を持ち,仮道管の半径方向径Rと接線方向径Tの比(R/T)が増大するほどせん断変形が大きくなる. 5.圧縮処理材の年輪の変形様式は,スギ,カラマツ材の場合おもにせん断変形型,ヒノキ,ベイマツ材の場合しゅう曲変形型であることを認めた. 6.放射組織,前年度晩材に隣接した早材第一細胞列は,変形拘束作用を受けて他のそれより小さい変形を示す. 7.荷重方向が接線方向か,半径方向かで細胞の変形様式は異なる.それは仮道管接線壁あるいは半径壁の変形として特徴ずけられる. 8.大変形による中間層の剥離,細胞壁の切断などはベイマツ材を除いて全く観察されなかった.
|