1996 Fiscal Year Annual Research Report
甲殻類における遊離D-アラニンの浸透圧調節物質としての生理機能
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07660278
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Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
阿部 宏喜 共立女子大学, 家政学部, 教授 (80086727)
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Keywords | 浸透圧調節 / 甲殻類 / D-アラニン / モクズガニ / D-アミノ酸 / 遊離アミノ酸 |
Research Abstract |
1.4月から10月までの毎月1回淡水順応モクズガニ試料を入手し,各5尾について諸組織中の遊離DL-アミノ酸含量を測定した.その結果,含量は異なるものの,どの組織でも主要なアミノ酸はD-,L-アラニン,D-,L-アルギニン,タウリンおよびグリシンであった.これらのうち,L-アルギニンおよびグリシンの季節変動は大きく,筋肉では6〜8月に最低値を示し,9月に最高値を示した.D-,L-アラニン含量は夏から秋にかけて増加し,D-アラニンの全アラニンに対する比率も4-6月の26%から10月の37%まで上昇を示した. 2.遊離 D-アラニン含量はモクズガニの体重および甲幅との相関を示さず,また雌雄間にも統計的有意差は認められなかった. 3.上記の各月のモクズガニを実験室で淡水から全海水にまで順応させた.筋肉中のD-アラニン含量は4-6月の個体と7-10月の個体との比べると,淡水,1/2海水および全海水のいずれにおいても7-10月の個体で高く,海水順応に伴って上昇を示した.7-10月の全海水順応個体では,10月に河口および海で捕獲したモクズガニとほぼ同程度の含量であった.一方,体液のD-アラニン含量はきわめてわずかであり,海水順応に伴う濃度上昇は認められず,このことは全遊離アミノ酸およびベタイン含量についても同様で,海水順応に伴って無機イオンの上昇が顕著であった.したがって,モクズガニは秋の降河産卵回遊中に体液の浸透圧はほとんど無機イオンで調節し,筋肉等の組織においては45%以上が遊離アミノ酸等による等浸透圧調節に依存し,D-アラニンの寄与はおよそ20%に達し,他の甲殻類と同様にD-アラニンは等浸透圧調節の主要なエフェクターと考えられた.
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