1996 Fiscal Year Annual Research Report
時差による睡眠・覚醒リズム障害の病態生理学的機構に関する研究
Project/Area Number |
07670085
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
勢井 宏義 徳島大学, 医学部, 講師 (40206602)
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Keywords | 時差 / 睡眠 / 体温 / 血圧 / 心拍数 / 日内リズム / ラット |
Research Abstract |
本研究は、いわゆる時差ボケと呼ばれる睡眠・覚醒リズム障害の病態生理学的発生機構を明らかにすることを目的とする。ラットの覚醒・睡眠、体温、血圧、心拍数を同時に記録しながら、次の研究を行った。1)通常の12時間明期・12時間暗期のサイクル下でのそれぞれのリズムとその相互関係を観察した。2)8時間の明暗サイクルの位相前進を経験させ、それぞれのリズム、及びその相互関係の変化を観察した。3)睡眠・覚醒リズム障害に効果があるといわれているビタミンB12を持続投与することによって、2)で観察された変化がどのような影響を受けるかを見た。その結果、1)体温、心拍数の日内リズムは、覚醒・ノンレム睡眠・レム睡眠の3段階において同様の変動を呈したが、血圧は、各段階によって、その日内リズムが異なった。すなわち、覚醒中の血圧は、体温、心拍数と同様に、暗期に高く、明期に低いという日内リズムを呈したが、ノンレム睡眠中の血圧には有意なリズムは観察されなかった。一方、レム睡眠中の血圧は、覚醒中のそれとは逆のリズムを呈した。このレム睡眠中の血圧の特異的な日内リズムは、血圧のスペクトル解析から、交感神経活動が関与していることが示唆された。レム睡眠中の血圧のゆらぎの大きさには明期と暗期に有意な差があり、明期において大きなゆらぎが観察された。2)明暗サイクルの位相を8時間前進させると、覚醒が減少し、ノンレム睡眠・レム睡眠が増加した。ノンレム睡眠は位相変位を経験すると、その日内リズムを平坦化させたが、レム睡眠は、その日内リズムを5-6日間崩さなかった。ノンレム睡眠の深さを示す脳波の徐波成分のリズムは、位相前進後、明期のはじめにあったピークが消失し平坦になった。ノンレム睡眠において、その明期における持続時間と暗期における持続時間との間の相関関係を観察したところ、位相変位後4-5日目間は正の相関を示した。位相変位後4-5日間は、ノンレム睡眠のホメオスタシスの機構がうまく作動していないことが推察された。体温の日内リズムは位相変位後平坦化した。その変化には、覚醒・ノンレム睡眠・レム睡眠の3段階の間に違いはなかった。血圧・心拍数も位相変位後に平坦化する傾向にあったが、有意な変化はほとんど観察されなかった。3)ビタミンB12を持続投与しているラットに8時間の明暗サイクル位相前進を経験させると、2)で観察した、ノンレム睡眠のホメオスタシスの崩れがなく、位相変位後も睡眠は増加しなかった。時差ボケ予防としてビタミンB12が有効であることが示唆された。
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[Publications] H.Sei,M.Sone,N.Kanamori,Y.Morita: "Light-dark difference in arterial pressure variability during REM sleep in the rat." Chronobiology International. 12. 389-397 (1995)
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[Publications] T.Kiuchi,H.Sei,H.Sano,A.Sano,Y.Morita: "Effect of vitamin B_<12> on the sleep-wake rhythun following an 8-hour advance of the light-dark cycle in the rat." Physiology & Behavior. 61. in press (1997)
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[Publications] H.Sei,N.Furuno,Y.Morita: "Diurval Changes of blood pressure,heart rate and body temperature during sleep in the rat." Journal of Sleep Research. 6(in press). (1997)