1995 Fiscal Year Annual Research Report
ブルギア属糸状虫感染幼虫体表抗原の発現と消退のメカニズムの解明
Project/Area Number |
07670294
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
及川 陽三郎 金沢医科大学, 医学部, 助手 (10139785)
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Keywords | Brugia pahangi / 感染型幼虫 / 体表抗原 / モノクローナル抗体 |
Research Abstract |
我々は以前,Brugia pahangi第3期感染型幼虫(L3)抗原で免疫したマウスより,B. pahangiおよびB. malayiのL3体表と反応するが他属のフィラリアL3およびBrugia属の成虫やミクロフィラリア(mf)の発育ステージとは反応しないモノクローナル抗体BpGlを作製し報告した(Oikawa et al. , 1992)。BpGlは感染防御能を有し,その認識する抗原はヒトのBrugia属フィラリア感染に対するワクチン用抗原として有望と考えられる。今回の研究では,この抗体で認識されるB. pahangiの体表物質が蚊体内発育中の第2期幼虫(L2)およびジャード体内発育中の第4期幼虫の体表には表現されておらず,またマウス腹腔内に投与された虫体ではL3の形態を有している時期に既に体表部の抗原性が減弱し始めることを認め,この抗原の体表部での発現期間が更に短いことが明らかにされた。一方、虫体切片の免疫組織学的観察では、蚊体内でL3へと脱皮する 1-2日前のL2体表内側の比較的厚い層で強い抗原性が観察され、L3体表と同様な抗原物質がこの時期のL2体内で既に形成されていることが明かとなった。これに対し蚊より採取したL3およびマウス投与4日目のL3の抗原部位は電子顕微鏡的に体表最外部の非常に薄い層に限局しており、体内では新たに抗原を形成していないものと考えられた。 すなわちフィラリア虫体内におけるこの物質の産生は中間宿主である蚊の体内でのみ起こり終宿主体内では起こらないと考えられ,BpGlが認識する抗原をフィラリアワクチンとして用いた場合に,既に宿主に感染寄生しているフィラリア虫体との過敏反応等の影響を無視できる点で都合がよい。更に,BpGlは蚊体内での発育虫体では,感染型であるL3体表とのみ反応することから,Brugia属フィラリア媒介蚊のinfective rateの算出にこの抗体を応用できると考え,その方法について実験的に検討した結果を第48回日本衛生動物学会(1996年3月,福岡)にて発表予定である。
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