1997 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト補足運動野と帯状回運動野の行動制御に関する臨床的研究
Project/Area Number |
07670727
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Research Institution | JICHI MEDICAL SCHOOL |
Principal Investigator |
田中 康文 自治医科大学, 医学部, 講師 (20163587)
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Keywords | 補足運動野 / 前部帯状回 / 把握反射 / 本能性把握反応 / 道具の強迫的使用 |
Research Abstract |
現在までの約40例の前頭葉内側面の障害例の検討から補足運動野と前部帯状回の行動調節における役割は明らかに異なることが分かった。すなわち補足運動野障害例ではその対側の手に表在と深部固有知覚刺激により把握反射が誘発された。このことから補足運動野は表在と固有深部知覚刺激に反応する運動を調節制御している可能性が示唆された。一方、前部帯状回、特にその中-後部障害例ではその対側の手が視角及び体性知覚刺激に対して接触を保とうとし、その刺激を追跡把握する異常行動がみられた。このことから前部帯状回の中-後部には外的刺激に対して接触を保とうとする行動を調節制御している可能性が示唆された。更に前部帯状回の前部はその中-後部とは異なる機能が存在することも分かった。すなわち前部帯状回の前部障害例では視覚的に且つ動機的に高められた状況下で検者の行為を無批判に模倣する異常行動がみられた。このことは前部帯状回の前部には動機的に意義付けられた情報に基づいて外的刺激に対する反応を調節制御している可能性が示唆された。また前部帯状回の中-後部と前部も障害された症例では、目の前に置いた道具を強迫的に使用する異常行動もみられた。このような異常行動は前部帯状回の中-後部損傷による視覚性探索行動に加え、視覚的に動機的に高められた道具の使用を抑制できなくなった結果生じのではないかと推察された。このような異常行動は前頭葉外側面あるいは頭頂葉に限局した障害例ではみられなかったことから前頭葉内側面損傷による特異な異常行動と解釈された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 田中康文: "Alien handの意義-道具の強迫的使用現象と拮抗失行を中心に-。" 神経心理学. 13. 172-176 (1997)
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[Publications] Tanaka Y: "Amnesia following damage to the mammillary bodies." Neurology. 48. 160-165 (1997)
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[Publications] 田中康文: "前頭葉内側面損傷と手の把握行動" 神経進歩. 42. 164-178 (1998)
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[Publications] 田中康文: "最新脳と神経科学シリーズ8記憶とその障害の最前線。" 高倉公朋,宮本忠雄, 217 (1998)
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[Publications] 田中康文: "最新内科学体系プログレス神経・筋疾患" 井村裕夫,尾形悦朗,高久史麿,垂井清一郎, 387 (1998)
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[Publications] 田中康文: "Annual Review神経" 後藤文男,高倉公朋,木下真男,柳澤信夫,清水輝夫, 324 (1998)