1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07672302
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
柳田 一夫 摂南大学, 薬学部, 助手 (10167695)
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Keywords | セレン / 亜セレン酸ナトリウム / 三酸化モリブデン / 芳香族ニトロ化合物 / アミン / 触媒 |
Research Abstract |
セレンは、微量必須元素の一つで、酵素の活性中心として酸化還元に関与するほか、貴金属毒性を軽減する因子として知られている。セレンの作用を有機化学的立場から再現して新規反応開発に役立てるという観点からの一連の研究で、亜セレン酸ナトリウムと三酸化モリブデンの組み合わせが、水素化ホウ素ナトリウムによる芳香族ニトロ化合物のアミンへの還元のよい触媒であることが明らかになった。今回、この反応系の適応範囲と限界を明らかにする目的で、官能基特異性、複素環に対する影響と脂肪族ニトロ化合物の還元を検討した。 実験は、ニトロ化合物(10mmol)、三酸化モリブデン(0.2mol)、亜セレン酸ナトリウム(0.2mmol)、水素化ホウ素ナトリウム(50mmol)を水(50ml)中、37℃で攪拌して行った。その後エーテル抽出、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで生成物を単離した。生成物の確認は、NMR,IR,融点を直接標品と比較して行った。市販されていない標品やニトロ化合物は、既知の方法で合成した。実験条件は、HPLCにより決定した。 種々の置換ニトロベンゼンの還元を行った。シアノ基、エステル、ハロゲン(CI,Br,l)、α、β-不飽和エステル、水酸基、アミノ基、エーテルは、変化せず、ニトロ基のみが還元された(収率77-95%)。また、複素環としてピリジン、インダゾール、インドリン、ジベンゾフランを持つニトロ化合物は、76-89%の収率で環に影響を与えることなくアミンを生成した。脂肪族ニトロ化合物は、ガスクロ分析で複雑な混合物を与えた。生成物の構造について、現在検討中である。 これまでの有機化学で、セレンは、金属の触媒毒と信じられていた。しかし、今回の反応は、セレンが金属の触媒活性を増強する可能性を示す例であり、セレン化合物の新しい使用法に道を開くものと考えられる。
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