1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07672369
|
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
武田 厚司 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (90145714)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 昌二 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (40046256)
|
Keywords | 脳 / 必須微量金属 / 亜鉛 / マンガン / 軸索輸送 / 嗅覚 / ニューロモジュレーター |
Research Abstract |
脳内で亜鉛が滞留する領域が海馬に加え大脳皮質の扁桃核、梨状皮質、鼻周囲皮質といった記憶と関連する領域であることをこれまでに見いだした。これらの領域がZn-containing neuron(シナプス小胞に亜鉛を含むニューロン)を高濃度に含むことから、亜鉛はニューロモジュレーターとして記憶に関与しているものと考えられる。さらに、亜鉛の滞留部位が嗅覚中枢であったことから、嗅覚路における亜鉛輸送を調べたところ、亜鉛は嗅覚路に沿って輸送されることが明らかになり、嗅覚路においてZn-containing neuronが存在することが示唆された。亜鉛が嗅覚の伝達に対してニューロモジュレーターとして働くことを調べるため、嫌悪臭を学習したラットを用いて、扁桃核の細胞外液中の亜鉛をキレーターで隠蔽したところ、嗅覚能は一時的に低下し、亜鉛が嗅覚の伝達に関与していることが考えられた。一方、Zn-containing neuronは、グルタミン酸作動性のニューロンの一部と推定されていたが、大脳基底核における亜鉛輸送から、線条体-黒質系、淡蒼球-黒質系等のGABA(γ-アミノ酪酸)作動性ニューロンがZn-containing neuronであることを示唆した。すなわち、亜鉛は興奮性ニューロンに加えて抑制性ニューロンにもモジュレーターとして含まれていると考えられることから、脳内で幅広く情報伝達に関与しているものと考えられる。一方、マンガンについても同様に脳内輸送を検討したところ、マンガンはニューロン内で軸索輸送されるとともに、ニューロン終末より、シナプス間隙に放出されることが示唆された。
|
-
[Publications] Jinko Sawashita et al.: "Brain distribution of zinc and monganese and their biological half-lives in rat" Jpn. J. Toxicol. Environ. Health (衛生化学). 42. 19- (1996)
-
[Publications] 澤下仁子 他: "ラット脳内における亜鉛とマンガンの動態:生物学的半減期及び嗅覚機能との関連性" Biomed. Res. Trace Elements. 7. 173-174 (1996)
-
[Publications] 加治正行 他: "当院における妊婦・新生児の血清および母乳中の亜鉛・銅濃度に関する検討" Biomed. Res. Trace Elements. 7. 187-188 (1996)
-
[Publications] Atsushi Takeda et al.: "Manganese transport in blood-cerebrospinal fluid barrier and its inracerebral transport" Jpn. J. Toxicol. Environ. Health(衛生化学). 43. 28- (1997)