1995 Fiscal Year Annual Research Report
自然の音環境の構造の解析-音空間における種の多様性と生物学的多様性
Project/Area Number |
07680569
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Natural History Museum and Institute, Chiba |
Principal Investigator |
大庭 照代 千葉県立中央博物館, 生態学研究科, 学芸研究員 (20250160)
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Keywords | 音環境 / 地域生態系 / 自然の音の多様性 / 生物学的多様性 / 環境指標 / 種分布 / 音空間 |
Research Abstract |
自然の音の多様性をめぐる尺度を得るための一つの方法として、平成7年度には音環境を構成する音源となる種(音源種)が、音空間内にどのような分布をするのかを、川辺、森林、耕作地、都市化地域からなる代表的な音環境区分について、以下の解析を進めた。 (1)DSPソナグラフ5500による周波数と時間の次元における検討 平成5-6年度の科学研究費補助金にて行なわれた音環境録音の解析から、とくに視覚化された音環境の構造の記録であるソナグラム資料を参考にして、各音源種の周波数と時間軸上での詳細を概観した。当初、区分内と区分間でサンプルを偏りなく抽出するための検討がむずかしかったが、試験的に累積的な方法でいくつかのサイズに分けて調べることにより、最終的な検討に持ち込みたい。この中で、今年度の補助金によってはるかに強化されたハードディスクおよびメモリ容量により、これまでむずかしかった大量メモリを必要とする音声ファイルの自由な運用ができるようになり、DSPソナグラフ5500の解析データの扱いが楽になったことを明記したい。最終の検討をもって音環境の各区分についての結果をまとめたいと考えるが、概観すると、周波数軸上での層化のしかたの違いと時間軸では占有度の違いが、音環境の特徴に貢献していると思われる。今後、この2つの軸によって、音源種間の関係を計れるような指数を検討したい。 (2)CSL4300による長時間にわたる音記録の解析 上記と同一の音環境の区分ごとに、パワースペクトラム(各周波数の相対的な強さの分布)の変化を検討し、その特徴を抽出する予定は、必要であった音声分析ソフトウェア(シグナルエンハンスメント)が完全な形での実用化が2月まで遅れてしまい、しかももともとのコンピュータとの間にハードの問題があるため、現在調査中である。しかし、これは解決できる問題なので、なるべく来年度にはこの観点も含めて検討を深めたい。 本研究では、音の切り口から自然環境の保護保全に利するような生物学的多様性の指標を得ることを目指しているが、今年度の検討で、周波数と時間の次元において、自然の音をできるだけ平易に音環境の基本的な構造と関連させる方法が明らかになった。
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