1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07680609
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
野島 哲 熊本大学, 理学部, 助教授 (30112288)
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Keywords | 造礁サンゴ / サンゴ礁 / 稚サンゴ / 定着加入 / ミドリイシ属 / ツマジロナガウニ / 摂食効果 / 死亡要因 |
Research Abstract |
1、沖縄県瀬底島周辺のサンゴ礁に、深度、地形を考慮して10ヶ所の調査地点を選び、主要な造礁サンゴの産卵開始前である5月下旬にそれぞれ20〜40枚の定着板を設置した。3カ月の後の9月初旬にこれらの定着板を回収し、定着した稚サンゴの種類と密度を測定した。平成8年度は、最近の7年間のうちで最も多くの稚サンゴの加入がみられ、多い場所では1m^2あたり30,000コロニーの稚サンゴが定着していた。種類としては、ミドリイシ属のサンゴが最も多く、90%以上を占めていた。次いで、ハナヤサイサンゴ、ショウガサンゴが残りの殆どを占めた。また、ハマサンゴ属の稚サンゴの定着も確認されたが、量的には非常に少なかった。地形的には、礁池、礁縁に多く定着し、礁縁から離れた沖合いでは、定着量は急減した。島の周囲の各調査地点間で定着量を比較したが、平成8年度はいずれの地点でも、定着量は多く、これまでの最高値を示した。 2、サンゴ礁の礁縁部に優占するグレーザーであるツマジロナガウニの除去区と、非除去区に定着板を設置し、3カ月後にその加入量を比較したところ、ナガウニの非除去区では多くのサンゴの定着がみられたが、非除去区では、一旦定着した稚サンゴが、ツマジロナガウニの摂食により、新規加入が多くみられなかった。このことから、ツマジロナガウニがサンゴの定着初期の主要な死亡要因であることが示唆された。 3、島の周囲の裾礁においてツマジロナガウニの密度と、平成7年度に加入した稚サンゴとの関係を解析したが、明瞭な結果は得られなかった。 4、1970年代にオニヒトデニより食害され、その後最近回復しつつあるサンゴ礁域の群集組成は、ミドリイシ属の種類が優占する。新規加入の稚サンゴもミドリイシ属が圧倒的多数を占めていることから、人工定着板のみでなく、実際のサンゴ礁においても同様の定着加入過程がおこっていること、ミドリイシ属のサンゴ礁がパイオニア種としての機能を持っていることがわかった。
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