1995 Fiscal Year Annual Research Report
日・独両語の他動詞主語についての認知意味論的対照研究
Project/Area Number |
07710347
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
洞澤 伸 岐阜大学, 教養部, 講師 (20229206)
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Keywords | 認知意味論 / 他動詞 / 主語 / 生物主語 / 無生物主語 |
Research Abstract |
本研究の目的は、次の例文(1)(2)のような対照性を踏まえ、日本語とドイツ語の両語における主語の表現の仕方を動詞の意味構造との関係および人間の認知の営みの側面から分析し、動詞の意味タイプと主語の意味特徴[±animate]との間における結合上の規則性を探ることであった。 (1)a. Er offnet die Tur. b. Der Wind offnet die Tur. (2)a.彼がドアを開ける。 b.^*風がドアを開ける。 分析の結果、次の3点が明らかになった。(1)生物と無生物の両方を主語としてとる他動詞の意味タイプは、一般に「場所の変化」を表わすものと「状態の変化」を表わすものの2つのタイプに分類することができる。(2)そのような動詞がとりうる生物主語と無生物主語は、本来は使役の事象における「原因となる出来事」であることから<コト>的な特性をもち、文の意味のおいて<使役主>という意味的役割をになっている。また、<使役主>には、その下位のバリエーションとして<動作主>、<原因格>、<道具格>といったものがある。(3)動詞の意味タイプと主語の意味特徴[±animate]との間には、『「ある変化を引き起こす」という意味内容をもつ動詞は、現実界においてその出来事が想定することができるものである限り、主語として生物でも無生物でもどちらでもとる』という結合上の規則性がある。以上の3点である。本稿の分析の過程で人間の現実界における出来事の言語的捉え方、すなわち言語による認識様式の一つが明らかになったと思われる。
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