1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07720021
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
江口 幸治 埼玉大学, 経済学部, 講師 (10213539)
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Keywords | 農業法 / 水 / 環境 / 有限会社 / 民法上の組合 / 農地法 |
Research Abstract |
水田は、作物を生産する手段であるだけではなく、多面的な機能を持つ。本研究では、水田が作物生産以外にどのような機能を持ち、それを維持するためにどのような組織が形成されているのか、さらにそれら組織が活動を行うについての問題点は何か、ということについて実態調査を行い、データを得た上で整理・検討することを目的とした。 本研究の結果、水田が作物生産以外に果している機能としては、もっぱら(1)景観維持、(2)生態系サイクルの維持、(3)保水機能等の環境維持機能があげられた。そして、これら機能は、たとえば、景観の維持については、その地域の観光収入の増加、周辺住民の心の安らぎをもたらし、また保水機能は、特に都市部において、雨季の河川増水時に大きな役割を果たすことが調査により明らかになった。 さらに本研究で行った調査から、以前は水田の持つ機能は、改めて認識されることはなかったが、現在においては水田の減少が著しいこともあり、作物生産機能の低下以上し、それ以外の機能低下が問題となり、水田の持つ他面的機能維持を目的とする組織が存在するに至ったことがわかった。つまり、水田で作物を生産することに付随した形での機能を期待するのではなく、むしろ積極的に水田の持つ多面的機能を求める組織の存在が少なからず認められたのである。たとえば、公益法人を設立し、その目的に景観の維持をあげたり、民法上の組合を設立し、減少著しい都市部の水田を維持している。本研究では、それら組織が水田の多面的機能維持のための活動を行う上での問題についても明確にし検討する予定であったが残念ながらまだ継続中であり、本年夏には最終的に報告書をまとめる予定である。
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