1995 Fiscal Year Annual Research Report
企業グループのグループ戦略-人的ネットワークを中心に-
Project/Area Number |
07730067
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
鈴木 智弘 香川大学, 経済学部, 助教授 (60235976)
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Keywords | 混成従業員構成 / 能力と待遇のアンバタンス / 依存と自律のパラドクス / インセンティブシステム / ライバルとの情報変換 |
Research Abstract |
80年代以降、大企業において分社設立による「企業グループ」展開及びそれに伴う企業新設が顕著になってきている。企業がグループ展開する理由には、新規事業進出、余剰人員対策などが考えられる。新規に設立された会社の従業員は、親会社からの出向だけでなく、独自に採用した従業員(プロパ-)から構成され、プロパ-従業員も新卒採用と、中途採用からなり、同一の職務を果たしながら、所属が異なることで、賃金システム、労働条件が違うことも多い。また、新規設立企業には、労働組合がない場合が多く、親会社からの出向者は、親会社の労働組合員、プロパ-従業員は、無組合状態といったケースも多くなっている。このような労働組合のない新設企業では、(1)どのように賃金、労働条件を決定しているのか、(2)その決定の際に親会社の存在は、どのような影響を与えているのか、更に、(3)従業員は、どのようなルートで、どのような発言をしているのか、これらの問題を検討するのが、本研究の目的である。本研究では、大手企業が積極的に進出した情報産業における事例研究をおこなった。サンプルは、10企業グループであり、親会社の所属業種は、鉄鋼、航空、機械などで、親会社には労働組合があり、対象子会社は、全て無組合である。調査は、子会社及び親会社の人事労務責任者へのヒヤリングを中心にした。その結果、グループ所属企業は、賃金、労働条件の決定に際して、自社の業績だけではなくグループ中核会社(親会社)の賃金、労働条件に大きく影響されること、また、その影響の度合いは、中核企業に対する依存度によって左右されることが明らかとなった。また、労働組合が結成されていないことから、賃金、労働条件に関する情報を経営側が獲得するルートとして、中核企業の人事・労務担当者だけではなく、同業のライバル企業などとも、様々な職階で情報交換を行っている。また、賃金に関しては、使用者側の専権事項とされているが、組合に替わる従業員組織との間で、労働条件に関する労使協議が行われている。親会社と子会社の関係は、特に子会社は、親会社に対して依存との自律の微妙なバランスがあることが人事労務関係でも明らかとなった。この結果を受け、親会社の人事労務政策の影響のもとに、子会社が如何にインセンティブシステムを構築するのか、それが企業業績とどのように関係してくるのか、また、親会社との関係がどのように変化するのかを今後検討したい。
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